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国内株式市場見通し:海外勢一極買い・ハイテク一極買いは続くか

■半導体株の急伸がけん引

今週の日経平均は107.96円高の30916.31円で終え、7週続伸。週明け22日は下落して始まったものの切り返して8日続伸となった。短期的な過熱感に伴う利益確定売りが先行したが、海外勢による旺盛な買い意欲が下値を支えた。一方、23日、24日は騰勢一服で下落。米債務上限問題を巡る先行き不透明感が上値を抑えたほか、一部の国内年金基金からの大口売りが観測された。しかし、週後半の25日、26日は再び騰勢を強めた。米エヌビディアの好決算を受けて半導体関連株が軒並み上昇したことが指数をけん引した。また、週末に1ドル=140円台に乗せた円安基調も追い風となった。

■米債務上限問題や米中経済指標に注目

来週の東京株式市場は波乱含みか。米株高を好感し、今週末の日経225先物は夜間取引で31500円まで上昇してきた。米国ではフィラデルフィア半導体株指数(SOX)の躍進が続いており、週明けの東京市場でも半導体関連を中心とした上値追いが続く可能性がありそうだ。また、海外投資家による日本株買いは続いているようで、今週からはロングオンリー、いわゆる買い持ち高しか作らない長期目線の投資家も日本株買いに動きはじめたとの指摘が聞かれている。投資委員会で承認を得た後に動くプロセスを踏まえると、これら実需筋の買い越しはまだ続く可能性が高く、日本株の底堅さは続きそうだ。

一方、東京証券取引所の投資部門別売買状況によると、個人投資家や年金基金の売買動向を反映するとされる信託銀行の売り越しが続いており、国内勢は足元の上昇相場に追随する動きを見せていない。日本株への期待が高まっているとはいえ、期待だけでどこまで海外勢が買い越しを続けるのかも未知数だ。また、東証プライム市場の値上がり銘柄と値下がり銘柄の割合が拮抗する日が多くなっており、今週末にいたっては値下がり銘柄が全体の7割を超え、全面高の様相には程遠い状況となっている。

海外勢の日本株買いの要因として、東証によるPBR改善要請や植田日銀体制下での金融緩和継続などが挙げられている。しかし、今週、日経平均が高値を更新するなか、鉄鋼や海運といったPBR1倍割れのバリュー(割安)系銘柄はむしろ軟調な動きが目立った。また、植田日銀総裁は今週、金融政策運営で重視しているのは賃金よりも物価上昇とし、政策変更はあくまでも持続的・安定的な物価2%の達成が見込めるかで判断するとの見解を示した。為替が再び1ドル=140円台に乗せ、沈静化したはずの輸入インフレが再燃しかねない状況が生じつつあるなか、再び政策修正への思惑が高まる場面があるかもしれない。実際、円安が大きく進行しているにもかかわらず自動車株の動きはさほど良くない。

つまり、今週の日経平均の高値更新はひとえに半導体関連株の上昇で説明可能といえる。今週、一時軟化した日経平均が30500円を割れずに切り返したのも、米エヌビディアの好決算に刺激を受けた半導体株高によるところが大きい。米国でもナスダック指数やSOX指数の強い動きが続いている一方でダウ平均は冴えない。生成AI(人工知能)ツールの普及を背景にハイテクブームが巻き起こっていることは悪いことではないが、ハイテクに一極集中しているような今の相場は心もとない。

東証によると、5月19日時点の裁定残高はネットベースで1兆275.58億円の買い越しとなっており、ネットの裁定買い残はまずまずの水準にまで積み上がってきた。長期目線の海外投資家も動きはじめたことは支援材料ではあるが、足の速い短期筋の買い持ち高もかなり積み上がっているとみられ、上値追いには慎重になるべきだろう。

来週は中国で5月の製造業購買担当者景気指数(PMI)や財新製造業PMIが、米国では供給管理協会(ISM)の5月製造業景気指数、5月雇用統計などが発表される。中国では経済指標の下振れが続き、すでに年頭にあった中国経済の回復期待は剥落している。弱い指標結果となれば中国地域での売上比率の高い銘柄の売り圧力となりそうだ。また、米国でもサービス業の堅調さは続いている一方、今週に発表された5月製造業PMI速報値は景況感の拡大・縮小の境界値である50を再び割り込むなど、製造業の停滞が確認されている。ダウ平均の下落が続いているところからも窺えるが、景気後退懸念は強く、ISM製造業景気指数の結果を注視したい。

米連邦準備制度理事会(FRB)の金融政策を巡っては、FRB内部でかなり意見が分かれているようだ。ただ、24日に発表された英国4月消費者物価指数(CPI)の大幅な上振れや、ウォラーFRB理事のタカ派発言、米経済指標の上振れを受けて、6、7月会合いずれかでの利上げが織り込まれつつある。米金利が上昇傾向を強めつつあるなか、米雇用関連の指標を受けた金利動向を注意深く見守りたい。ほか、米債務上限問題のデッドラインが近づくなか、政府・民主党と野党共和党による交渉が相場のボラティリティーを高める可能性にも注意しておくべきだろう。

■有効求人倍率、中国PMI、米ISMなど

来週は30日に4月失業率、4月有効求人倍率、米3月FHFA住宅価格指数、米5月消費者信頼感指数、31日に4月鉱工業生産、4月商業動態統計、4月住宅着工統計、中国5月製造業PMI、米4月JOLTS求人件数、米地区連銀経済報告(ベージュブック)、6月1日に1-3月期法人企業統計、5月新車販売台数、中国5月財新製造業PMI、米5月ADP全米雇用統計、5月ISM製造業景気指数、2日に米5月雇用統計、などが予定されている。

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