FISCOFISCO

オセアニア通貨の攻防【フィスコ・コラム】

豪ドル・NZドル相場は年初来安値を更新後、値を戻しつつあります。背景にあるのはオーストラリアとニュージーランドの金利差との相関性。両国中銀の金融引き締めは終盤に入り、目先はNZ準備銀行(NZ中銀)の「利上げ打ち止め」を見極めながら緩やかな豪ドル高・NZドル安が進みそうです。

NZ中銀は5月24日に定例会合を開催し、政策金利を0.25%引き上げ5.50%としました。2021年10月から11会合連続の利上げです。一方、豪ドル・NZドルはその前日の取引で年初来安値を更新したものの、NZドルの急落で節目の1.06NZドルから上げ幅を拡大しました。NZ中銀の声明や総裁発言から次回会合での利上げサイクル休止の見方が広がったことが、NZドル売りを強めたようです。

豪ドルとNZドルは一般に商品相場に影響されやすいですが、両国の脱中国路線により足元は両国の金利差が大きく左右しているようです。昨年の値動きを振り返ると、NZ中銀は利上げで先行したものの、7カ月遅れの2022年5月に引き締めに踏み切った豪準備銀行(豪中銀)の方が、引き締め余地があるとみられたため、豪ドルは1.1490NZドルに浮上。ただ、それをピークに反落し、その年の上昇分を削りました。

豪ドル・NZドルは今年に入ってやや持ち直していましたが、春先の両中銀による政策決定で明暗がはっきり分かれます。4月4日に豪中銀が政策金利を3.60%で据え置いたのに対し、NZ中銀は翌5日に市場予想を上回る4.75%から5.25%への引き上げを決定。豪ドルは1.0450NZドルまで大きく下げ、その時点での年初来安値を付けました。その後は経済指標や長期金利をにらんだ展開が続いています。

しかし、両中銀の引き締め政策が終盤であることに変わりはなく、利上げ余地は確実に縮小しています。NZ中銀は今回の会合で政策金利を5.50%とし、現時点では次回7月の会合の政策据え置きが予想されています。他方、豪中銀は5月2日の会合で、政策据え置きの予想に反して再び0.25%の利上げを決定し、市場を驚かせました。また控えめながら、さらに追加的な引き締めに前向きな姿勢を見せています。

両中銀の政策決定を受け、両国の利回り格差が縮小しており、豪ドル高に振れやすくなっています。消費者物価指数は両国とも高止まりの様相ですが、インフレ圧力はオーストラリアの方が強いとみられ、その点も豪ドル買いに振れやすい要因です。ただ、豪中銀は政策運営が不透明で、決定プロセスの改革を求められていることも意識されています。当面は豪ドルの売り買いも慎重にならざるを得ないでしょう。

(吉池 威)

※あくまでも筆者の個人的な見解であり、弊社の見解を代表するものではありません。

ログイン、もしくは永年無料のアカウントを作成して、このニュースを読みましょう