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米国株式市場見通し:債務上限交渉の行方や雇用統計に注目

債務上限問題の行方に引き続き注目だ。イエレン財務長官は債務上限措置が6月5日までに尽きるとし、従来の1日から期限を若干延長し、交渉に時間の余裕ができた。ただ、交渉が合意に近づいていると伝わる一方、共和党が政府の歩みよりの乏しさに言及するなど、先行き不透明感はくすぶっている。債務不履行懸念が強まった場合は上値が抑制されることになるだろう。一部の格付け会社はすでに国の格付けを引き下げる可能性を示唆しており、万が一、格下げされた場合、売り材料になる可能性には注意しておきたい。また、FRBの早期の利下げ予想から一転して追加利上げ観測が高まったことも株式相場にとってはマイナス材料だ。逆に、債務上限引き上げに成功した場合は相場の上昇に拍車をかけるだろう。

ほか、FRBの金融政策決定を左右する重要指標として雇用統計、ISM製造業景況指数、JOLTS求人指数、単位人件費などの最新の結果にも注目だ。FRBは次回6月連邦公開市場委員会(FOMC)の参考材料となる地区連銀経済報告(ベージュブック)も公表する。需要の状況、労働市場の逼迫や物価動向を巡るコメントに焦点を当てたい。もし、需要が依然堅調で企業が人手不足に悩まされていることが明らかになるなど、労働市場の強さや物価圧力が証明された場合は、追加利上げがより確実視されよう。雇用統計では失業率が数十年ぶりの低水準を維持し追加利上げを正当化する見込みで相場の重しとなりそうだ。

1-3月期 GDP、個人消費改定値が予想外に上方修正され経済が景気後退を回避する可能性も出てきた。また、同期の価格指数も上方修正されており、インフレの鈍化が予想通りのペースで進まず、多くのFRB高官がインフレ対処のため金利を一段と引き上げる必要性に言及。早くて7月の利下げを織り込んでいた市場も利上げはまだ終了していないとの見解に転じ、短期金融市場では7月までの追加利上げを完全に織り込んだ。来週の指標が金融政策の決め手になりそうだ。経済動向や金融政策を巡り依然不透明感は強いが、インターネット以来の技術革命としてAI技術への期待が急速に高まっており、引き続きハイテクが相場支えることになろう。なお、29日はメモリアルデーの祭日で休場となる。

経済指標では、1-3月期住宅価格指数、3月FHFA住宅価格指数、3月S&P20都市住宅価格指数、5月消費者信頼感指数、5月ダラス連銀製造業活動(30日)、5月シカゴPMI、4月JOLTS求人件数(31日)、5月ADP雇用統計、1-3月期非農業部門労働生産性・単位人件費、新規失業保険申請件数、4月建設支出、5月ISM製造業景況指数(6月1日)、5月雇用統計(2日)、などが予定されている。また、FRBは31日に、ベージュブックを公表する。

主要企業決算では、コンピューターメーカーHP(30日)、サイバーセキュリティ製品を扱うクラウドストライク・ホールディングス、クラウド型ソフトウェア会社のセールスフォース、衣料小売りのカプリ・ホールディングス(31日)、ディスカウント小売りのダラー・ゼネラル、半導体メーカーのブロードコム、コンピューターメーカーのデル・テクノロジー、ヨガアパレルのルルレモン・アスレティカ、クラウドコンピユーティングのブイエムウェア(6月1日)、などが予定されている。

(Horiko Capital Management LLC)

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