一般的な移動平均線 (MA)には従来からラグが存在しますが、3重指数移動平均線 (TEMA) は、このラグを無くしてトレーダーがトレンドの強弱をより簡単に判断できるようにするために考案されたものです。このため、3重指数移動平均では元のEMAから複数のEMAを取り、その結果からラグを差し引いています。
3重指数移動平均は、以下の計算式で算出されます:
3重指数移動平均 = (3 x EMA1) − (3 x EMA2) + EMA3
各定義:
EMA1 = 元のEMA
EMA2 = EMA1のEMA
EMA3 = EMA2のEMA
上記「計算」セクションに詳しい説明がありますが、3重指数移動平均の計算式の使用目的はラグを軽減して、短期的な価格の方向性とトレンドをよりスムーズに評価することにあります。重要な点は、価格が3重指数移動平均線の上方で推移している場合は上昇トレンド、その逆に下方で推移している場合は下降トレンドであることを確認できるという点です。また、価格が3重指数移動平均線を下抜けた時は、価格の下落や下降への反転を示唆している可能性があります。
従来のEMAやMAとは異なり、3重指数移動平均線は価格の変動に素早く反応し、その計算においてはラグを軽減しています。しかし、3重指数移動平均線も従来のEMAやMAと同様の方法で使用することができます。最も注目すべきは、3重指数移動平均線の方向が、短期的な価格の方向性と全体的なトレンドを示していることでしょう。線が上向きの場合は、価格も上昇していることを意味します。そしてご想像のとおり、線が下向きの場合は価格も下降していることを意味します。しかし、このインジケーターの計算結果からラグが完全に排除されるわけではありません。したがって、価格が急速に変化した場合、その変化をすぐには追跡できない可能性があることを理解しておくことが重要です。さらに、計算対象期間を長くすると、価格変動の方向追跡やトレンド追跡に遅れが生じるケースも多くあります。
3重指数移動平均線によって、サポートやレジスタンスになり得る価格帯が示されることもありますが、これは計算対象期間に大きく依存しています。例えば、全体的に価格が上昇している場合、価格が3重指数移動平均線まで下降して押し目をつけた後、上昇を続けるように見えることがあります。3重指数移動平均線を使用する中で、こうした事象が生じたのであれば、以前にもサポートとレジスタンスになっていたことがあるはずです。もし、過去にサポートやレジスタンスを示していなかったとすれば、将来的にもサポートやレジスタンスを示すことはないと判断してよいでしょう。
また、3重指数移動平均線を価格の代用として用いるトレーダーも多くいます。このインジケーターの一本のラインが、ローソク足、バーチャート、あるいはラインチャートにありがちなノイズをフィルタリングしてくれます。
3重指数移動平均線は、ラグを軽減する優れた指標として多くのトレーダーに知られていますが、他の指標と同様でやはり欠点もあります。例えば、一般的にMAはトレンドが出ている市場、つまり価格の方向性が特に強い場合には非常に有効です。しかし、トレンドが不安定で価格の方向性が弱い場合は、価格が上下して方向性が定まらない為、MAのみならず3重指数移動平均線も誤ったシグナルを発生させる可能性があります。
また、ラグを減らすことが有用だと考えるトレーダーがいる一方で、計算からラグを差し引くインジケーターに憤慨しているトレーダーがいることも事実です。価格のちょっとした動きにも常に反応するようなツールは使いたくないので、インジケーターにはラグがある方が良いと考えるトレーダーも実際にいます。多くの場合、3重指数移動平均線は他のMAやEMAよりも反応が早く、SMAよりも詳細に価格を追跡しますが、これは、価格がSMAをクロスする場合の値動きと比較して、3重指数移動平均線の場合では、より小さな値動きでもクロスする可能性があることも意味しています。こうしたことがポジションを持っているトレーダーを動揺させたり、明確なトレンドの変化がない場合には、積極的な取引を望まない投資家をかえって面倒な事態に直面させる結果になるという可能性もあります。
3重指数移動平均線はラグを減らすことによって価格変動を滑らかに表示します。また、計算方法は異なりますが、他の移動平均線の代わりにもなります。3重指数移動平均線は1本の線として表示されます。計算方法は元のEMAから複数のEMAを取り、その結果からラグを差し引くというものです。