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新旧オイルショック比較

SP:SPX   S&P500指数
最近は読みにくい相場が続いている。原油価格が下がり始めてインフレ上昇が収まるかと思いきや予想を上回ったり、それによって株価が下落するかと思いきやその下落は一瞬で、金利が景気後退懸念で下がったことで逆に上昇したりなど。

この第三次オイルショック(OS)と言われる現在の読みにくい相場に対して、元祖OS(第一次オイルショック)時のチャートと比較したら何か見えてこないかと淡い期待を込めて重ねてみた。

色が濃い線(およびコメント)が現代、同色で色が薄い線(およびコメント)が元祖として、元祖のチャートをウクライナショックとなるべく横軸が重なるように49年分オフセットをかけて重ねている。(SP500だけは値もx40倍している。)
一番下の原油価格だけあたかも別種のチャートのように見えるが、これも同じチャートを横にずらしただけである。元祖OS時の原油価格は当時の原油生産の多くを占めていた石油輸出国機構(OPEC)の一声で戦略的に決まっていたが、1980年以降に非OPEC国でも原油が増産されその支配力が弱まっていき、現在のような需給で決まるチャートらしいチャートへと変わっていった。

当時のインフレ(薄紫)は、それより2年ほど前に起こった香港かぜ(パンデミック)による金融緩和の影響を受けて、原油価格上昇より半年くらい前から始まっていたことが分かる。あまりにも近年の状況と似ており、歴史は繰り返すものだなと感心する。
一方で当時の株価は、景気加速によるインフレが起こる前からそれを見越した事前利上げで逆イールドを起こした辺りでピークを迎えている。ちょうどこの辺りから原油高騰前の事前インフレが始まる。
その後半年ほどインフレが続き、それを上回るペースで当時は利上げしていたようだが、続くオイルショックでインフレは2年程度続いた。
この当時はOPECが強すぎてもはや不自然な角度で原油価格が高騰していたせいでインフレ率12%まで上昇したが、現代の貿易環境ではさすがにここまではいかないだろう(と信じたい)。
ただ以前から別の記事で繰り返し述べている通り、少なくとも過去の大インフレ時は、インフレ率を上回るように金利が推移している点が現在との決定的な違いである。これに対して現在は金利に対してインフレ率が遥かかなたである。当時のFF金利(薄赤線)を見ると1973年の原油急騰に対して一時大幅利上げしたものの、景気後退を懸念してか、その後半年程度利下げが起こっている(薄赤+薄緑)。しかしその後再びインフレに負けて再度利上げをしている。この現象は現在の10年債利回り低下による株価上昇が壮大なダマしの可能性もあると示唆してくれている。

赤・緑・紫の線の並び順は違えど、現在のチャートは第一次OSごろの(原油価格を除く)各種チャートは総じて半年~1年程度ずれただけのような動きをしている。原油の需給関係は当時よりマシだが利上げ面では大きく出遅れているため、トータルで見ても状況的には当時より良いとも悪いとも言えない。今現在のインフレ率はよく見ると元祖OS時の1974年の原油価格上昇直後にも匹敵しており、当時はそこからちょうど1年程度インフレと株価下落(しかも途中で加速)が起こっている点は刮目に値する。2021年3月ごろに急激なインフレが始まったが、この時の原油価格を見ると60$程度で、これはコロナ前の水準と大差ない。当時の原油高は1974年におよそ5$から10$へと2倍になり、その際のインフレ率も6%から12%へと2倍になっている。同様に現代の原油価格も60$から120$へと一時は2倍の水準を記録しており、60$台に戻ったころのインフレ率5.4%から比率計算すると約11%くらいまでは上昇する可能性がありそうだ。目先の原油高は減少しているが、図示していないが先日52週移動平均で反発しているので長期の上昇トレンドはまだ終わったとは言えない。直近のSP500は元祖のチャートとだいぶ重なってきているので、このまま順当にトレースされると2023~2024年に2650$まで下落してしまう。TradingViewの再生機能で本稿を定期的にウォッチしていきたい。
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