ウィリアムズ・アリゲーター (Alligator)

定義

ウィリアムズ・アリゲーターは、金融市場や個々の銘柄の値動きについて、トレンド発生の確率の方が横ばいレンジの確率よりも低いという考えに基づいたトレンドフォロー型のインジケーターです。平滑移動平均を用いて市場のトレンドを分析します。このインジケーターの開発にあたっては、市場に強いトレンドが発生している際には、一般的に機関投資家も個人投資家もより多くの利益を得ることができるという考えを念頭に置いています。

歴史

ウィリアムズ・アリゲーターは、経験豊富なトレーダーであるビル・ウイリアムズによって初めて紹介されたインジケーターです。ウィリアムズは市場心理学の初期のパイオニアであり、投資家やトレーダーのセンチメントが市場のパフォーマンスやその後のトレンドに影響を与える可能性があると考えました。

計算

ウィリアムズ・アリゲーターは、その計算に単純移動平均 (SMA) を使用していますが、一般的にはインジケーターの反応を遅らせた結果に、さらに平滑化された平均を加えています。このインジケーターでは、フィボナッチ数である5、8、13の期間に設定された3本の平滑移動平均線を使用します。

ウィリアムズ・アリゲーターの計算方法は、以下の式で表されます:

単純移動平均 (SMA): 

それ以降の数値は以下の通りです:

各定義:

SUM1: n期間分の終値の合計

PREVSUM: 直前のバーまでの平滑化された総和

SMMA1: 最初のバーの平滑移動平均

SMMA(i): 現在のバー(最初のバーを含まない)の平滑移動平均

CLOSE(i): 現在の終値

n: 指定した平滑化の期間

使用される3本の移動平均線は大きく分けて「顎」、「歯」、「口/唇」の3本があり、これらによって「ワニ」が出来上がっています。その後のトレンドの進行具合と取引価格のレンジに対する反応によって、これらの構成要素が開いたり閉じたりします。それでは、ウィリアムズ・アリゲーターの各機能をもう少し深堀りしてみましょう。

顎。ワニの顎は青いラインで表示され、期間13のSMMAです。このラインは、あとに続く値においてバー8本分ほど平滑化されます。

歯。ワニの歯は赤いラインで表示され、期間8のSMMAです。このラインは、あとに続く値においてバー5本分ほど平滑化されます。

口/唇。ワニの口/唇は緑のラインで表示され、期間5のSMMAです。このラインは、あとに続く値においてバー3本分ほど平滑化されます。

要点

ウィリアムズ・アリゲーターは、テクニカル分析に使用される優れたツールです。3本の平滑移動平均を使用することによって、トレーダーは市場に対してより鮮明なイメージを描いて分析に臨むことができます。さらに、このインジケーターは収束と発散の両面を備え、トレードに役立つシグナルを構築しています。この「ワニ」の「顎」がゆっくりと動くのに対して、「口/唇」は速く動きます。

「口/唇」が他の線と交差して下降している場合は、空売りのチャンスです。また「口/唇」が上向きにクロスしている場合、通常は買いの機会を示しています。ラインが下向きにクロスしているとき、この「ワニ」は「眠っている」、上向きにクロスしているときは「目覚めている」と表現されることがよくあります。

着目点

このインジケーターを使用する際にトレーダーや投資家が知っておくべき用語、また注意を要する用語が他にもあります。ここでは、それらを少し分けて説明します。

"Eating with [it's] mouth wide open. (口を大きく開けて食べる)" この言葉は、ウィリアムズ・アリゲーターの3本のラインがそれぞれ独立して上または下へ伸びている場合を指しており、取引の時期を示しています。これはロングまたはショートポジションを管理すべき時期を具体的に示すものです。

"Sated. (食べ飽きている)" この言葉は、インジケーターの各ラインが狭いバンドに収束するときのことを指します。ラインが水平方向へとシフトしている場合、トレンドが終わりに近づいている可能性を意味している場合があります。これはトレーダーに取引ポジションの調整と利益維持を促す警告となります。

"Sleeping. (眠っている)" この言葉は市場の動きが不安定であり、インジケーターが高確率で偽のシグナルを発信することをを指します。これについては、制限事項のセクションで詳しく説明します。

制限事項

先に述べたように、ウィリアムズ・アリゲーターは3本の線が互いに交差している場合、偽のシグナルを出すことで知られています。これは、しばしば起こり得ることで、多くの場合、不安定な相場状況によるものです。これが "Sleeping. (眠っている)" と呼ばれるものです。では、インジケーターが "Sleeping. (眠っている)"の場合、トレーダーはどうすればいいのでしょうか?ウィリアムズは、傍観者として待つようにトレーダーにアドバイスしています。このインジケーターの大きな欠点の1つでもありますが、大きなレンジの中であまりに多くのシグナルが出るとほとんどの場合は失敗に終わり、ちゃぶつきを誘発することになりかねません。こうした時に価格に極端な方向転換が起こればトレードやトレンドに変化が生じることになるでしょう。

サマリー

ウィリアムズ・アリゲーターは、トレンドフォロー型のインジケーターで、平滑移動平均を使用して相場のトレンドを分析し、全体的な分析に適した滑らかな結果を提供します。これはインジケーターの計算方法にも表れています。このアリゲーターは「顎」、「歯」、「唇・口」の3つの主要な部分に分かれています。これらの各要素には、トレーダーに相場のトレンド動向を告げ知らせるサインがあります 。