出来高フットプリントチャート
定義
出来高フットプリントは、指定された時間足のローソク足1本ずつについて、ローソク足がカバーする価格水準をいくつかに分けながら出来高の分布を視覚化できるパワフルなチャートツールです。流動性が高いエリアや取引が活発なエリアを見極めようとする際に役立つ情報が多く得られます。Premiumプラン以上のユーザーであれば、チャートタイプのドロップダウンメニューから「出来高フットプリント」のオプションを選択することで、チャート上に出来高フットプリントを表示できます。
デフォルトでは各ローソク足の左側に売り出来高、右側に買い出来高の分布が表示されています。色のグラデーションをオプションで選択でき、これによって各水準の出来高について相対的な大小が示されます。また、売買の不均衡が著しいエリアはその水準の横に縦線が引かれて強調表示されます。さらに、各ローソク足の「バリューエリア (VA)」および「ポイントオブコントロール (POC)」が示され、各ローソク足の下には出来高デルタと出来高合計の情報が表示されます。
フットプリントの様々な表示タイプやチャートをカスタマイズできるオプションについては、後述の「設定」セクションですべてご覧いただけます。
計算
出来高のデータソース
このチャートタイプでは、シンボルの過去データを計算する際に使用する出来高データを、バー内部の複数の時間足、すなわちそのチャートより下位の時間足から取得します。この時間足は、そこで利用できる過去データが尽きると次に小さな時間足から計算が再開され、下位から順に徐々に大きい時間足になります。別の言い方をすれば、チャートの履歴を深く遡れば、それだけ出来高データのバー内の時間足は大きくなります。チャート上で直近のローソク足のフットプリントは、計算に最も細かい情報を使用しているため一番正確なものになります。
下位時間足へのデータのリクエストは、1秒、1分、15分、60分、1日の順で行われます。過去のフットプリント表示でリクエストされるバー内の最大の時間足は、チャートのタイムフレームによって異なります。
出来高の分類
出来高フットプリントチャートでは、バー内の値動きの方向に基づいて出来高を「買い」と「売り」に分類します。各出来高の分類については、以下のアルゴリズムを使用して決定しています:
- 下位時間足のバーの終値がその始値より大きい場合、その出来高を「買い」に分類します。
- 下位時間足のバーの終値がその始値より小さい場合、その出来高を「売り」に分類します。
- 終値が始値と等しい場合は、以下のように判定します:
- 下位時間足で現在のバーの終値が1つ前のバーの終値を上回った場合、その出来高を「買い」に分類します。
- 下位時間足で現在のバーの終値が1つ前のバーの終値を下回った場合、その出来高を「売り」に分類します。
- 下位時間足で現在のバーの終値が1つ前のバーの終値と等しい場合、1つ前のバーの分類と同じとします。
このチャートでは様々な価格水準で下位時間足の出来高を分類し、それを累積してフットプリントを構築しています。
インバランス (不均衡) の検知
バランスのとれた市場とは、需要と供給が均衡しており比較的価格が安定している市場のことを指します。これとは逆に、需要と供給の間に著しいギャップがあるとインバランス (不均衡) な市場が発生して、そこに顕著な価格変動がもたらされることになります。
出来高フットプリントチャートでは、ある価格水準での「買い」出来高が、その一つ下の価格水準での「売り」出来高を指定した割合で上回った場合に、買いへの不均衡を検出します。同様に、ある価格水準での「売り」出来高が、その一つ上の価格水準での「買い」出来高を指定した割合で上回った場合に、売りへの不均衡を検出します。チャート設定のパラメーター「インバランス (不均衡)」で、出来高の一方が他方を上回る割合を指定することによって不均衡を検知する条件を決めることができます。デフォルトではこの値は300%(つまり、出来高の一方が他方の3倍になるという条件)に設定されています。
「買い」への不均衡が検知されれば、その価格水準の右側に縦線が引かれ、「売り」への不均衡があれば、その価格水準の左側に縦線が引かれます:
上の例では、異なる価格水準の間で順番に出来高が比較されています。それぞれの比較の評価については、「売り/買い」の出来高のうちで大きい方が指定した不均衡の閾値を超えるかどうかを以下の式にしたがって決定します: max(buy, sell) ≧ (imbalance percentage / 100) * min(buy, sell)
最初に行われる計算は以下のとおりです: 506.37 (「買い」) ≥ (300 / 100) * 166.433 (「売り」) ― この式は正しく、買いへの不均衡が示されています。その後の比較も同じロジックに従います。つまり、下から3番目の価格水準での「買い」出来高と下から2番目の価格水準での「売り」出来高が比較され、以下同様に、4番目の「買い」出来高と3番目の「売り」出来高が比較されていきます。
市場内部で生じる均衡/不均衡を見極めるために、こうした出来高フットプリントによる分析が頻繁に利用されます。バランスが取れた市場では様々な価格水準で均等な出来高分布が示され、その市場が安定・均衡していることが示唆されます。これとは逆に、均衡を欠いた市場では特定の価格水準に出来高が集中していることが明確に示されており、需給バランスが崩れて価格動向にトレンドが生まれる可能性を示唆していることがあります。
解釈
注文フロー
注文執行のプロセスの中で、市場参加者は買い手/売り手双方が満足する均衡価格を模索しながら取引を進めていきます。各取引での注文数量から、それが買い圧力と売り圧力のどちらに寄与するかが決まります。ある資産について供給が需要を上回った場合、市場は買い手にとってより公平な立場を求めて価格は下落します。逆に、需要が供給を上回った場合は、売りたいと考える市場参加者の数が十分になるまで価格は上昇します。
出来高フットプリントチャートを使って価格水準の間に存在している売買の集中度を分析すると、買い手と売り手のどちらが優位に立っているのか、需給バランスは均衡/不均衡のどちらなのか、あるいは流動性が高い(つまり、取引が活発に行われている)エリアはどこなのかということについて、より深い洞察を得られます。こうした洞察から市場のセンチメントを測ることができるようになり、またトレードチャンスを見極めることも可能になります。
オークションの不成立
オークション理論において、オークションの不成立とは、ある銘柄について新しい価格を定める試みが失敗して以前の価格水準に戻ってしまうパターンを指します。従来では「マーケットプロファイル」などのツールを使用することでオークションの不成立が分析されてきましたが、こうしたパターン例をフットプリントを使って見極めることもできます。
一般的にオークションの不成立は、市場において買い手/売り手の一方が他方を十分に惹き付けられなかったことから、その価格水準が維持されなくなった時に発生します。すると、市場参加者はそれぞれ自らのポジションについて再評価や調整を行うことになるので価格が急に反転する可能性があります。このようにオークションの不成立から同時にボラティリティの上昇が生まれるケースも多いため、これが市場の重要なターニングポイントを示唆していることがあります。
トレーダーやアナリストがしばしばオークションの不成立を注意深く観察しているのは、そこに市場のダイナミクスや隠れたトレードチャンスについて貴重な発見があるからです。オークションの不成立は市場が反転するパターンの予測や、サポート/レジスタンスの水準を見極めるのに役立ちます。
下図の例を見ると、下矢印で示した箇所では連続して価格の上昇が示されていますが、それと同時に買い出来高も減少しています。図の左から4本目のバーでは、これ以上買い手が価格を押し上げることができずに下降へと転じたポイントで、売り手と買い手の間の不均衡が生じています。したがって、こうした不均衡のエリアを、レジスタンスになり得る価格水準と解釈することもできます。のちにこの水準がブレイクされた場合には、上昇トレンドの発生を示唆することになるでしょう:
デルタ・ダイバージェンス
出来高フットプリントにおける「デルタ・ダイバージェンス」とは、価格動向と出来高デルタの間に対立や不一致が見られることを指します。
正のデルタ・ダイバージェンスは、価格が下落し続けているにもかかわらず、デルタ値が上昇したりプラスに転じるときに発生します。これとは逆に、負のデルタ・ダイバージェンスは、価格が上昇し続けているにもかかわらず、デルタ値が下降したりマイナスに転じるときに発生します。これらのダイバージェンスのパターンは、現在の値動きに反して買い圧力や売り圧力が縮小していることを示しており、現在のトレンドの弱まりや反転のシグナルになる場合もあります。
下図の例では下降バー4本が示されていますが、そのうちの2本でデルタがプラスになっています。つまり、これらのバーが正のデルタ・ダイバージェンスを示すものになります:
フットプリントチャートでデルタ・ダイバージェンスを分析することが、相場の反転や方向転換の予測に役立つケースは多くあります。しかし、ダイバージェンス発生の確認をはじめ、十分な情報をもとに取引判断を下すには、使用するテクニカル分析ツールを追加して他の要因も考慮に入れることが不可欠です。
高値/安値の水準における過剰な取引
オークションのマーケット理論では、価格の上昇が需要の枯渇を招き、価格の下落が供給の枯渇をもたらすとされています。これがオークションの完了と呼ばれる動きです。フットプリントチャート上では、高値の水準で売りがゼロまたは最小、安値の水準で買いがゼロまたは最小であるように見えます。
しかし、時折、未完了オークションと呼ばれる状態が発生することがあり、この時は高値/安値の水準における買い出来高と売り出来高の間に、以前の水準と比べてわずかな差が生じています。この状態は、適正価格を探し求める動きがまだ完了しておらず、現在の高値の上や安値の下に関心を持つ市場参加者の存在を示していることがあります。つまり、このパターンは、市場価格が現在のレンジを超えてオークションが完了するまでその方向へと動き続ける可能性を示唆しています。
設定
出来高フットプリントチャートでオプションのカスタマイズを行うには、「チャート設定」のダイアログを開きます。チャート画面上部のツールバーに表示された「ギア」アイコンをクリックするか、画面右下の「ギア」アイコンや画面左上のシンボル名の横に3つの点で表示されている「詳細」アイコンをクリックすれば「チャート設定」にアクセスできます。
ローソク足
ローソク足のセクションは、通常のローソク足チャートと同じです。ここでローソク足の外観の設定ができます。
出来高フットプリント
行のサイズ
フットプリントの各行(価格水準)のサイズを決定する方法を制御します。以下、2つのオプションから選択できます:
- 「自動」オプションでは、直近で正規化されたアベレージ・トゥルー・レンジ(ATR)値に基づいて自動的にサイズが計算されます。その際には次の計算式が使用されます: 0.2 * NormalizedATR / MinimumTick。チャートタイプとして「出来高フットプリント」を選択した時、あるいはシンボルや時間足を変更するとサイズが再計算されます。このオプションを使用する場合は、後述のパラメーター項目でATR計算の期間を指定します。
- 「手動」オプションでは、後述のパラメーター「行ごとのティック」で指定したティック数が計算に利用されます。
ATRの期間
「行のサイズ」のパラメーターで「自動」オプションが選択されている場合に、アベレージ・トゥルー・レンジ (ATR) を平滑化する期間を指定します。この値がフットプリントの行ごとのティック数を計算する際に使用されます。
行ごとのティック
「行のサイズ」のパラメーターで「手動」オプションが選択されている場合に、フットプリントの行ごとのティック数を指定します。
タイプ
チャート上のフットプリントの表示モードを指定します。以下、3つのオプションから選択できます:
- 「買いと売り」(デフォルト)では、各々の価格水準での売り出来高がローソク足の左に表示され、買い出来高は右に表示されます。
- 「デルタ」では、各々の価格水準での出来高デルタ(買い出来高と売り出来高の差)がバーの右に1列で表示されます。
- 「合計」では、 各々の価格水準での買い出来高と売り出来高の合計がバーの右に1列で表示されます。
背景のグラデーションを適用
有効にすると、異なる価格水準で出来高を比較した結果に基づいてフットプリントの背景色が変わります。色のグラデーションを計算するアルゴリズムは次のとおりです:
- 出来高の最大値と最小値を決定します。
- 出来高のレンジ(出来高の最大値と最小値の差)を計算します。
- 現在の出来高から出来高の最小値を引きます。
- 3で求めた値を2で求めた出来高のレンジの値で割って、割合を計算します。
- 4で得られた割合を使って、オプションで指定された色の中から表示色を選択します:
- 値が0.25未満の場合、1番目の色を選択します。
- 値が0.25以上0.5未満の場合、2番目の色を選択します。
- 値が0.5以上0.75未満の場合、3番目の色を選択します。
- 値が0.75以上の場合、4番目の色を選択します。
- 各々の価格水準について、3~6を繰り返します。
フットプリントのタイプが「買いと売り」または「デルタ」の場合は、買い側と売り側で背景色を別々に計算します。
背景
このパラメーターによって、フットプリントの価格水準で使用される背景色を指定します。フットプリントのタイプが「買いと売り」または「デルタ」の場合は、買い側と売り側で別々の色を選択することができます。「背景のグラデーションを適用」のオプションを有効にしている場合、各色のオプションで4種類のグラデーションを利用することができます。さきのセクションで説明したアルゴリズムを使って各々の価格水準の色が選択されます。
バリューエリア
バリューエリアのライン表示を有効にして、バリューエリアが占める割合を指定します。バリューエリアハイ (VAH) のラインはバリューエリアに含まれる価格水準のうち最も高い水準の上部に表示され、バリューエリアロー (VAL) のラインはバリューエリアに含まれる価格水準のうち最も低い水準の下部に表示されます。出来高フットプリントのバリューエリアの計算アルゴリズムは、出来高プロファイルのインジケーターで使用されているものと同様です。
ラベル
POC
ポイントオブコントロール (POC) について表示の有無を指定します。
サマリー情報の表示
全体の出来高合計・売り出来高合計・買い出来高合計・全体の出来高デルタの情報について表示の有無を指定します。
インバランス (不均衡)
大きなインバランス (不均衡) を検知する条件として、売り/買い出来高の一方が他方をどれだけ上回るかについてその割合を指定します。出来高フットプリントチャートでインバランス (不均衡) をどのように検知するかについては、先述の「インバランス (不均衡) の検知」セクションをご参照ください。
強調表示
インバランス (不均衡) が生じている価格水準について、強調表示の有無とその色を指定します。この強調表示を有効にすると、不均衡が生じている価格水準に色がついた縦線のマーカーが表示されます。買いへの不均衡のマーカーは各水準の右側に、売りへの不均衡のマーカーは左側に表示されます。
層の行数
売り/買いへの不均衡が上下に連続する価格水準で生じている場合、この不均衡の「層」の表示有無や、「層」とみなすのに必要な条件になる行数を設定します。これを有効にすると、不均衡の「層」がチャート上に表示され、再度価格がこの価格水準に交差するまで右側に投影されます。