出来高フットプリントチャート

定義

出来高フットプリントは、指定された時間足のローソク足1本ずつに対し、そのローソク足がカバーしている価格水準をいくつかに分けて出来高の分布を視覚化するパワフルなチャートツールです。流動性の高いエリアや取引が活発なエリアを見極めようとするときに、役に立つ情報をさらに増やすことができます。

計算

出来高のデータソース

出来高フットプリントを利用できるのはPremium以上のプランを保有しているユーザーです。このツールでは表示中のシンボルの過去データを計算する際に、データソースとして下位の時間足を複数使用しています。最初にデータがリクエストされるのは1秒足からですが、ここで利用できるデータが尽きると次に大きい時間足のデータへと順番にリクエストが行われます。過去を大きく遡ると、それだけリクエストされる時間足が大きくなるので出来高分布の精度は低くなります。

下位時間足へのデータのリクエストは、1秒・1分・15分・60分・1日の順で行われます。

売り/買い出来高の判定

買い出来高か売り出来高かについては、価格が動いた方向を分析して次のように判定します:

  • 現在のバーの終値が始値より大きい場合、買い出来高
  • 現在のバーの終値が始値より小さい場合、売り出来高
  • 現在のバーの終値が始値と等しい場合、以下のように判定します:
    • 1つ前のバーの終値が現在のバーの終値より小さい場合、買い出来高
    • 1つ前のバーの終値が現在のバーの終値より大きい場合、売り出来高
    • 1つ前のバーの終値が現在のバーの終値と等しい場合、1つ前のバーで行われた売り/買い出来高の判定結果と同じとします

フットプリントのチャートでは、以上のロジックに基づいて下位時間足の各バーを分析し、その出来高を合計して現在チャート上に表示されているバーのフットプリントを構築します。

インバランス (不均衡) の判定

バランスのとれた市場とは、需要と供給が均衡しており比較的価格が安定している市場のことを指します。これとは逆に、需要と供給の間に著しいギャップがあるとインバランス (不均衡) な市場が発生して、そこに顕著な価格変動がもたらされることになります。

買い出来高が売り出来高を超えている状態は買方への不均衡であり、現在の価格水準での買い出来高が、それよりも1つ下回る水準での売り出来高を一定の割合で上回った場合にこのように判定されます。売り出来高が買い出来高を超えている場合はこの逆になります。すなわち、現在の価格水準での売り出来高が、それよりも1つ上回る水準での買い出来高を一定の割合で上回ると、これは売方への不均衡を示すシグナルになります。

不均衡と見なす条件として、売り/買い出来高の一方が他方をどれだけ上回るかその割合を決める必要がありますが、これはチャート設定で決めることができます。一般的にはこの値に300%が使用されるケースが非常に多く、「フットプリントチャート」でもこれがデフォルトになっています。この設定の場合、不均衡と判定されるには売り/買い出来高の一方が他方の3倍になっていることが条件になります。

買方への不均衡があれば、その価格水準の右側に縦線が引かれ、売方への不均衡があれば、その価格水準の左側に縦線が引かれます。

市場内部で生じる均衡/不均衡を見極めるために、こうした出来高フットプリントによる分析が頻繁に利用されます。バランスが取れた市場では様々な価格水準で均等な出来高分布が示され、その市場が安定・均衡していることが示唆されます。これとは逆に、均衡を欠いた市場では特定の価格水準に出来高が集中していることがはっきりと示され、需給バランスが崩れて価格動向にトレンドが生まれる可能性を示唆していることがあります。

解釈

注文フロー

注文執行のプロセスの中で、市場参加者は買い手/売り手双方が満足する均衡価格を模索しますが、その結果として取引が成立します。取引量は買い手と売り手のどちらが主導権を握っているかで左右され、それによって買い圧力と売り圧力のどちらに寄与するかが決まります。供給が需要を上回った場合、市場は買い手にとってより公平な立場を求めるため価格は下落します。逆に、需要が供給を上回った場合、その価格でも買うという買い手がいるかぎり価格は上昇します。

出来高フットプリントによって、どの価格帯でどれだけの取引活動があるのか、あるいは、その動きの主導者は買い手と売り手のどちらなのかといったことが明らかになるので、これが市場の動きを理解する助けになります。たとえば、取引の開始点がどこで、どちらに価格は動く可能性が高いのか — あるいは、どこで需給バランスは保たれ、どこでバランスが崩れるかなどがわかります。このように、出来高フットプリントは市場のセンチメントを測りながらトレードチャンスを見つけるツールとなっています。

オークションの不成立

オークションの不成立とは、ある銘柄について新しい価格を定める試みが失敗して以前の価格水準に戻ることと定義されます。マーケットプロファイルの理論でよく使われる考え方ですが、フットプリントでもこうした状態を見つけることができます。

一般的にオークションの不成立は、買い手/売り手が取引相手を十分に惹き付けられなかったことが理由となって、その価格水準が維持されなくなった時に発生します。すると、市場参加者はそれぞれ自らのポジションを再評価して、それに応じて戦略を調整することになるので価格が急に反転する可能性があります。このようにオークションの不成立が高いボラティリティを生み出すケースも多くあるため、これが市場の重要なターニングポイントにもなり得ます。

トレーダーやアナリストがオークションの不成立を注意深く観察しているのは、そこに市場のダイナミクスや隠れたトレードチャンスについて貴重な発見があるからです。オークション不成立を見極めることは市場の反転の予測やサポート/レジスタンスの水準の検証に役立ち、絶えず変化する市場環境から利益を確保すべくトレード戦略を洗練させることにも一役買っています。

下図の例を見ると、下矢印で示した箇所では一貫して価格の上昇が示されていますが、それと同時に新しいバーの出現のたびに最も上の価格水準で需要が減少していることも示されています。そして、次のバーでは買い手側のバランスが崩され、これ以上価格を押し上げることができずに下降へと転じています。したがって、この価格水準をレジスタンスと見なすことができます。おそらく、のちにこの水準が再び試され、ブレイクした時には上昇トレンドの発生を意味することになります。


デルタ・ダイバージェンス

フットプリントチャートにおける「デルタ・ダイバージェンス」とは、価格動向とデルタ値の間に対立や不一致が見られることを指します。

正のデルタ・ダイバージェンス: これは価格下落時にデルタ値のマイナスが縮小したり、プラスに転じた場合を指します。価格が下落しているにもかかわらず、買い圧力が増えたり売り圧力が減っていることを示唆しています。下降トレンドの弱まりや価格反転のシグナルになる場合もあります。

負のデルタ・ダイバージェンス: 負のデルタ・ダイバージェンスは、上記のケースとは逆に、価格上昇時にデルタ値のプラスが縮小したり、マイナスに転じた場合を指します。価格が上昇しているにもかかわらず、売り圧力が増えたり買い圧力が減っていることを示唆しています。上昇トレンドの弱まりや価格反転のシグナルになる場合もあります。

フットプリントチャートのデルタ・ダイバージェンスは、相場の反転や方向転換が起こることを示すシグナルとして利用されることが多々あります。しかし、ダイバージェンス発生の確認をはじめ、十分な情報をもとにして取引判断を下すには、使用するテクニカル分析ツールを追加して他の要因も考慮に入れることが不可欠です。

高値/安値の水準における過剰な取引

オークションのマーケット理論では、価格の上昇が需要の枯渇を招き、価格の下落が供給の枯渇をもたらすとされています。これがオークションの完了と呼ばれる状態です。フットプリントチャート上では、高値の水準で売りがゼロまたは最小、安値の水準で買いがゼロまたは最小であるように見えます。

しかし、時折、未完了オークションと呼ばれる状態が発生することがあります。オークションが未完了の間は、高値/安値の水準における買い出来高と売り出来高の差がわずかしかありません。この状態では依然として現在の高値の上や安値の下に関心を持つ市場参加者が存在しており、トレンドがまだ終わりを迎えていないことを示していることがあります。したがって、オークションが完了するまで、価格は現在のトレンドの方向にしたがって動き続ける可能性があります。

設定

「出来高フットプリント」の設定を開くには、チャート画面上部のツールバーに表示されたレイアウト名の右にある歯車のアイコンをクリックします。

ローソク足

ローソク足のセクションは、通常のローソク足チャートと同じです。ここでチャート上のローソク足の表示と色の設定ができます。

出来高フットプリント

行のサイズ

価格水準を表す行のサイズ(高さ)計算を行うモードを指定します。「自動」と「手動」の2つのモードから選択できます:

  • 自動 - 「ATRの期間」で指定した期間に対応する直近のATR値に基づいて、行のサイズが自動的に選択されます。このATR値はチャートタイプに「出来高フットプリント」が選択されたとき、またはシンボルが変更されたときに計算されます。価格水準ごとのティック数は「直近で定められたATR値/5/ティック」という式で計算されます。
  • 手動 - 「行ごとのティック」で指定されたティック数が行のサイズになります。

ATRの期間

現在表示中の時間足でアベレージ・トゥルー・レンジ (ATR) を計算する際に使用するバーの本数を設定します。ここから算出されるATR値が「行のサイズ」で「自動」が選択されているときの最適サイズを決めるために使用されます。

行ごとのティック

価格水準を表す行ごとのティック数を設定します。このパラメーターは「行のサイズ」で 「手動」が選択されているときに表示されます。

タイプ

チャート上のフットプリントの表示モードを指定します。3つのモードから選択できます:

  • 買いと売り - フットプリントがバーの左と右の2列に表示されます。左の列には現在の価格水準での売り出来高の合計が表示され、右の列には現在の価格水準での買い出来高の合計が表示されます。
  • デルタ - バーの右に1列で表示されます。各々の価格水準で、買いと売りの出来高の差が表示されます。
  • 合計 - バーの右に1列で表示されます。各々の価格水準で、買いと売りの出来高の合計が表示されます。

背景のグラデーションを適用

有効にすると、現在の価格水準の出来高に応じてフットプリントの背景色が変わります。

色を決定するアルゴリズムは次のとおりです:

  1. 出来高の最大値/最小値を決定します
  2. 出来高のレンジを計算します - 出来高の最大値から最小値を引きます
  3. 現在の価格水準での出来高について、出来高のレンジ内のどこに位置しているかを求めます - 現在の出来高から出来高の最小値を引きます
  4. 出来高のレンジに対して、現在の価格水準での出来高の位置を示す割合を決定します - 3で求めた値を2のレンジの値で割ります
  5. 4で得られた値を使って、指定された色の中から表示色を決定します:
    1. 値が0.25未満の場合、1番目の色を使用します
    2. 値が0.25以上0.5未満の場合、2番目の色を使用します
    3. 値が0.5以上0.75未満の場合、3番目の色を使用します
    4. それ以上の場合は、4番目の色を使用します
  6. 各々の価格水準について、3~6を繰り返します。

「買いと売り」モードでは買い側と売り側で別々に計算された背景色になり、色の決定に関わるのは売り/買いのうち同種の出来高だけとなります。

背景

フットプリントの背景色を設定します。「買いと売り」および「デルタ」モードでは、買いと売りを示す色を個別に設定できます。「合計」モードでは合計出来高に対して単一の背景色が使用されます。「背景のグラデーションを適用」を有効にした場合、選択した色に対して4種のグラデーションが利用できます。

バリューエリア

バリューエリアのライン表示を有効にして、各々の価格水準が占める範囲全体に対してバリューエリアが占める割合を指定します。VAHラインはバリューエリアに含まれる価格水準のうち最も高い水準の上部に表示され、VALラインはバリューエリアに含まれる価格水準のうち最も低い水準の下部に表示されます。バリューエリアを計算するアルゴリズムについては、出来高プロファイルのインジケータに関するこちらの記事で説明されているものと同様です。

ラベル

POC

ポイントオブコントロール (POC) の表示を有効にします。

サマリー情報の表示

売り出来高合計、買い出来高合計、および双方の差分デルタについての情報を表示します。

インバランス (不均衡)

インバランス (不均衡)

売り/買い出来高の比率を不均衡とみなす条件として、一方が他方をどれだけ上回るかについてその割合を指定します。詳細については、先述の「インバランス (不均衡) の判定」セクションをご参照ください。

強調表示

不均衡が生じている価格水準の色を設定します。買方/売方への不均衡にそれぞれ別の色を設定できます。オンにすると、不均衡が生じている価格水準に指定した色の縦線が表示されます。買方への不均衡は価格水準の右側に、売方への不均衡は価格水準の左側に縦線が表示されます。

層の行数

上下に連続した価格水準(行)で売方/買方への不均衡が生じている場合、この不均衡が何行連続したときに「層」とみなすか ― その条件になる行数を設定します。この設定を有効にすると、設定した行数以上で連続した不均衡が生じている場合に該当行がチャート上に層として表示され、再度価格がこの層に到達するまで右側に延長表示されます。