【ユーロ円8年ぶり高値】個人投資家のポジションと相場はなぜ逆行するのか?ユーロ円が昨年2022年10月にドル円が152円手前まで上昇したときの高値を更新し、8年ぶりの新高値をつけた。
ユーロ側は、ユーロ圏の根強いインフレに伴うECBのタカ派姿勢と中国経済回復や資源価格の落ち着きにサポートされたユーロ買い、一方の円側は、植田日銀総裁の緩和継続スタンスを受けた円売りによってユーロ円の上昇圧力になっているようである。
ユーロ円週足
この8年ぶり高値更新の数週間前、Bloombergでこんな記事が出ていた。
「個人投資家が円売りポジション削減、植田総裁会見でも先安観強まらず」
内容は、4/10時点の個人投資家のユーロ·円の売り越し(つまり円の買い越し)ポジションがが5カ月ぶりの大きさとなったというものである。
URLはハウスルールの都合上掲載できないので興味のある方は検索してみてほしい。
この報道が出た後のユーロ円の動きを示したのが以下の日足チャートである。
報道が出た日を青の縦線で示しているが、翌日から陽線が連発し、今日まで続く上昇に繋がっていることがわかる。
日足
為替のポジション動向を日頃からウォッチしている方にとってみれば、またかと思ったことかもしれないが、このように個人投資家のポジション動向に関する報道が出た後に、相場がそれとは逆方向に動くというのは非常によくあることである。
今回も例に漏れずそのパターン通りの動きとなった。
さて、前置きが長くなったが今回の投稿では、なぜこのように個人投資家のポジションと相場の動きは逆行しやすいのかという点について、個人的な見解を二つほど共有してみたいと思う。
今後同様の報道が出たときに身構えることができるようになるであろう。
なぜ個人投資家のポジションと相場は逆行することが多いのか?
1. 個人が買っている(売っている)限り、大口は売りやすい(買いやすい)
相場を動かしているのは大口投資家と呼ばれる勢力であるという点に異論のある方はいないであろう。
コロナショック以降の株価の大幅上昇相場では、空売りヘッジファンドを個人投資家がショートスクイーズに追い込んだミーム銘柄が脚光を浴びたが、圧倒的な市場規模を誇る為替市場ではそのような動きは不可能であろう。
さて冒頭のユーロ円のケースに話を戻すと、4/10時点で個人投資家のユーロ円売り(つまり円買いポジション)に大きく傾いていたということであるが、これは相場を動かす大口投資家からすれば、まだ円を売ることのできる相手が相応数いるということでもある。彼らはそもそも取引サイズが大きいため、自らの注文を約定させるためには市場にそれなりの相手が必要になる。
個人投資家の円買いポジションがそれなりにあれば、それはまだ円を売る機会になり得るということである。
なお、個人投資家を損切りさせる、ストップを狩るなど、その手口が何かと個人投資家から敵対視されることの多い大口投資家だが、筆者は大口投資家が個人投資家だけを狙ってこういう動きをしているとは考えていない。このテーマはそれだけで一つの投稿がかけるくらいなので補足に留めておきたいと思う。
2.自分以外のポジションは全て邪魔
さて、大口投資家が実際に相場を動かすとなった時、彼らが何を考えるかについて想像してみたい。
当然自分たちが抱えている注文のできるだけを多くを捌き、できるだけ多くの利益をあげることを目指すのではないか。
その場合、自分たちがこれから相場を動かそうとしている方向と同じ方向にある別の市場参加者のポジションは、彼らの目的を阻害する要素でしかない。
再びユーロ円を例として取り上げると、もしあるプレイヤーがユーロ円相場を下落に転じさせようとする場合、自分たち同様にユーロ円の下落を見込んだポジションは全て邪魔ということである。
つまりそれらのポジションは一旦駆逐して、自分たちが相場を下落させるのに十分な量の反対注文が出回ったところで初めて下落を仕掛けるというものである。
もちろん1:100といった具合に自分たち以外のポジションを全て駆逐するなんてことはできないだろうが、概ねこのような活動が数多の大口投資家の間でバトルフィールドのように繰り広げられているのではないか、と想像している。(そしてそこには個人投資家のポジションも巻き込まれることになる。)
2については筆者個人の推測で書いているだけなので本当のところはわからない。
ただいずれにしても、個人投資家のポジションと相場が逆行することが多いのは事実である。
個人投資家のポジション動向に関する報道が出た場合は、まだその方向には動き出さない、
覚えておいて損はない”インジケーター”なので、ぜひ今後の注意事項として参考にしていただければと思う。