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〔BREAKINGVIEWS〕ECB、ユーロ圏成長回復の萌芽につまずくリスク

長い停滞期を経てユーロ圏は一定の成長を示し始めている。サービス業がけん引しているが、消費が盛り上がれば利下げを準備している欧州中央銀行(ECB)に混乱をもたらす可能性がある。

国際通貨基金(IMF)のデータによると、2006年以降のユーロ圏成長率は年平均1.4%で、米国の2.2%、先進国全体の1.8%を下回っている。IMFは今年も低成長が続くと予測しており、米国の2.7%、先進国の1.7%に対し、ユーロ圏は0.8%にとどまりそうだ。

しかし、回復の萌芽も見え始めている。S&Pグローバルがまとめた4月のユーロ圏のHCOB総合購買担当者景気指数(PMI)改定値は51.7で3月の50.3から上昇し、昨年5月以来の高水準となった。サービス業が好調で、好不況の分かれ目である50を2カ月連続で上回った。

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Thomson ReutersEurope's services activity is growing faster than in the US Europe's services activity is growing faster than in the US

消費は横ばいだが、近いうちに上向く可能性がある。ベレンベルクのホルガー・シュミーディング氏によれば、インフレ調整後の家計可処分所得は23年第4・四半期に前年同期比3%増加。24年と25年の両方で少なくとも2%のさらなる伸びが見込まれるという。人々はこのお金をため込んでおり、ユーロ圏の貯蓄率は23年第4・四半期で14.7%と、米国の4倍以上となっている。

ただ、消費が拡大すればユーロ圏の成長率はECB予測(24年0.6%、25年1.5%)を上回るかもしれない。そうなればラガルドECB総裁はジレンマを抱えることになる。

ECBは来月利下げに踏み切る公算が大きい。市場は今年中にあと2回の利下げを予想しており、25年も金融緩和が続くと見込んでいる。

こうした中、賃金とサービス価格という2つの要素がユーロ圏の景気回復を促進すれば金融緩和の必要性は低下するだろう。

欧州の回復が加速すれば利下げを重ねることは難しくなる。とはいえ、ユーロ圏がいかに米国に遅れているかを考えれば、それがなお正しい行動であることに変わりはない。

(筆者は「Reuters Breakingviews」のコラムニストです。本コラムは筆者の個人的見解に基づいて書かれています)

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