ストキャスティクス (STOCH)

定義

ストキャスティクス (STOCH) は決められた幅を上下する数値からモメンタムを測定するオシレーターです。ユーザーが定義した期間の高値/安値の範囲と比較した終値が、どのような位置にあるかを表示するように設計されています。一般的にストキャスティクスには3つの使用方法があり、買われ過ぎや売られ過ぎの水準の特定、ダイバージェンスの見極め、強気と弱気のセットアップ (シグナル) の識別に使用されます。

歴史

ストキャスティクス (STOCH) は、1950年代にジョージ・レーンによって開発されました。レーンは、モメンタムの測定が重要なのは、その変化が価格の変化に先行するからだと考え、自らが開発したインジケーターをモメンタムを測定する上で優れた方法だと信じていました。2007年のインタビューで、彼はこのように述べています。「ストキャスティクスは価格のモメンタムを測定するものです。ロケットが空へと上昇していくのを思い浮かべてください。もし、そこからロケットが下降するなら、その前に必ずスピードを落とさなくてはいけません。モメンタムはいつも価格よりも先に方向を変えるのです。」

計算

ストキャスティクスは、%Kと%Dの2本のラインを使用します。%Kとは、指定した過去バー数の価格帯の中で、終値 (K) の位置を示す割合のことです。
%K = SMA(100 * (直近の終値 - 最安値) / (最高値 - 最安値), 平滑化K)
%Dは%Kの平均を平滑化して、大きなトレンドにおいても数値の変動を最小化します。
%D = SMA(%K、期間D)
最安値=指定した期間 (期間K) の直近バー数の中での最安値
最高値=指定した期間 (期間K) の直近バー数の中での最高値

基礎

ストキャスティクスは決められた範囲内で値が動くオシレーターで、0から100の間を移動する2本の線で構成されています。最初のライン (%K) はユーザーが定義した期間内の高値/安値のレンジに対して、直近の終値の位置を示します。2番目のライン (%D) は%Kラインの単純移動平均です。他のインジケーターと同様に、ストキャスティクスで使用する期間もすべてユーザーによって定義することが可能です。%Kを期間14、%Dを期間3のSMAに設定するのが最も一般的な期間として使用されています。

ストキャスティクスは終値からモメンタムを判断する、ということが基本的な理解となります。終値が指定した過去期間の高値/安値レンジの上半分であれば、%Kが上昇し、モメンタムの増加、つまり売りに対して買いの圧力が増えたことを示します。また、終値が指定した過去期間の高値/安値レンジの下半分であれば、%Kは下降し、モメンタムの減少、つまり売りに対して買いの圧力が衰えたことを示します。

着目点

買われ過ぎ/売られ過ぎ

値の範囲が決められている他の指標と同様、ストキャスティクスが示す主なシグナルは、買われ過ぎ/売られ過ぎの状態を示すものです。デフォルトの水準値は、売られ過ぎが20、買われ過ぎが80です。これが典型的な水準ですが、取引する金融商品によっては、どんな状況にも適しているとは限りません。正しい水準を見つけるには過去の分析だけでなく、いくつか実験をしてみることも必要です。ストキャスティクスで買われすぎ、売られすぎを判断する場合、トレンドに沿った売買をするのが一般的です。買われ過ぎは必ずしも弱気の動きを意味するものではなく、売られ過ぎは必ずしも強気の動きを意味するものではありません。買われ過ぎ (売られ過ぎ) の状態は、トレンドが強まる兆候の場合も多く、必ずしも反転が迫っているわけではありません。

買われすぎとは、ストキャスティクスが上限値を超えた状態のことです。

売られすぎとは、ストキャスティクスが下限値を超えた状態のことです。

ダイバージェンス

ダイバージェンスは、価格の動きがストキャスティクスと異なっていることが確認された場合に発生します。

強気のダイバージェンスは、価格が安値を切り下げているのに対し、ストキャスティクスが安値を切り上げているときに発生します。

弱気のダイバージェンスは、価格が高値を切り上げているのに対し、ストキャスティクスが高値を切り下げているときに発生します。

強気/弱気のセットアップ

強気/弱気のセットアップは、ダイバージェンスと非常によく似ていますが、見方が逆になります。

強気のセットアップとは、価格が高値を切り下げる一方で、ストキャスティクスが高値を切り上げているときに発生するものです。このセットアップでは、価格が上昇する前に強気のエントリーポイントとして見ることができる押し目が発生しています。

弱気のセットアップとは、価格が安値を切り上げる一方で、ストキャスティクスが安値を切り下げているときに発生するものです。このセットアップでは、価格が下落する前に弱気のエントリーポイントとして見ることができる戻り目が発生しています。

サマリー

ストキャスティクスは、モメンタムの変化を見極めるための定番ツールです。さまざまな時間足 (日、週、月、日中) で使用できる汎用性の高いインジケーターであることも、人気の理由となっています。シグナル発生という点でも、たしかに優れたシグナルを発します。しかし、ストキャスティクスのシグナルを (とりわけダイバージェンスと強気/弱気のセットアップを目的として) 使用する場合は、トレンドに沿った使い方が最適であることに留意してください。テクニカル分析を行うのであれば、予め市場全体のトレンドを把握しておく必要があります。ストキャスティクスのみではなく、トレンドラインや他のテクニカル分析と併用して、市場の方向性を確認することは大切です。

パラメーター

K

Kの計算に使用する期間を指定します。デフォルトは14です。『計算』の段落では「期間K」と記載しています。

D

Dの計算に使用する期間を指定します。デフォルトは3です。『計算』の段落では「期間D」と記載しています。

Smooth

Kの平滑化に使用する期間を指定します。デフォルトは3です。1を指定すると、平滑化が無効になります。『計算』の段落では「平滑化K」と記載しています。

スタイル

K

%Kの表示/非表示、%Kの現在値を示す価格ラインの表示/非表示を切り替えることができます。また、%Kラインの色、線の太さ、スタイル (デフォルトは「ライン」です) を選択できます。

D

%Dの表示/非表示、%Dの現在値を示す価格ラインの表示/非表示を切り替えることができます。また、%Dラインの色、線の太さ、スタイル (デフォルトは「ライン」です) を選択できます 。

アッパーバンド

買われ過ぎラインの表示/非表示を切り替えます。線の値、線の太さ、値、スタイル (デフォルトは「破線」です) を選択できます。

ロワーバンド

売られ過ぎラインの表示/非表示を切り替えます。線の値、線の太さ、値、スタイル (デフォルトは「破線」です) を選択できます。

背景

バンド内の背景色の表示/非表示を切り替えます。また、色や不透明度を変更することができます。

精度

インジケーターの値について、端数を切り上げて残す小数点以下の桁数を設定します。この数値を大きくすれば、インジケーターの値の小数点以下の桁数が多くなります。