移動平均線 (MA)

定義

移動平均線 (MA) は、価格に基づいた遅行 (または反応) インジケーターであり、一定期間の資産の平均価格を示します。移動平均線は、トレンドの確認や、サポートとレジスタンスのエリアの特定、またはモメンタムを測定する上でも良い方法です。基本的に、移動平均線はチャートを分析する際のノイズを軽減します。ノイズは価格と出来高の両方の変動によって生じます。移動平均線はすでに起こった事象に反応する遅行指標である為、予測指標としてではなく、確認や分析のためのインジケーターとして使用されます。また、移動平均線は、ボリンジャーバンドやMACDなどの有名なテクニカル分析ツールの基盤となっています。移動平均線にはいくつかの種類がありますが、どれも基本的なロジックは同じで、そこにバリエーションを加えたものです。その中でも注目すべきものとして、単純移動平均線 (SMA)、指数移動平均線 (EMA)、加重移動平均線 (WMA) があります。

種類

移動平均線は、ある一定期間の金融商品の平均価格を可視化したものです。移動平均線にはいくつかの種類があります。一般的には、どのデータに比重を置くか、つまり、どこに重要性を持たせるかによって種類が異なります。

単純移動平均線 (SMA)

単純移動平均は、重み付けをしない移動平均です。つまり、各日付のデータはどれも等しく重要で、同じ重みをもっています。新しく日付が変わるごとに、最も古い日付のデータが削除され、最新の日付のデータが冒頭に追加されます。

計算

3期間SMAの例
期間内の合計 / 期間

終値: 5, 6, 7, 8, 9

1日目: (5 + 6 + 7) / 3 = 6
2日目: (6 + 7 + 8) / 3 = 7
3日目: (7 + 8 + 9) /3 = 8
加重移動平均線 (WMA)

加重移動平均はSMAと似ていますが、直近のデータを重視している点が異なります。期間の各データに乗数が割り当てられ (直近の価格の乗数が最大で、その後は順に下がります)、特定のデータの重み、つまり重要性が変更されます。そしてSMAと同様に、新しいデータが冒頭に追加されると、最も古いデータから順に除外されます。

計算

SMAと似ていますが、各期間に重み付け (乗数) のある点が異なります。直近の期間に最大の比重を置きます。以下は、5期間WMAの例です。

期間内の合計値 / 期間 

終値: 5, 6, 7, 8, 9

期間 乗数 価格 加重平均
1 1 X 5 5
2 2 X 6 12
3 3 X 7 21
4 4 X 8 32
5 5 X 9 45

合計 = 15 X 35 = 525

WMA = (加重平均の合計) / (乗数の合計)

WMA 115 / 15 = 7.6667
指数移動平均線 (EMA)

指数移動平均は、WMAと非常によく似ています (その一種でもあります)。WMAとの大きな違いは、古いデータが平均の計算から外されることがない点です。つまり、古いデータは、選択された期間の長さを外れた場合でも、乗数を保持します。 (ただし、ほとんどゼロに減少しています)。

計算

EMAの計算には3つのステップがあります。ここでは5期間EMAの計算式を取り上げます。

1. SMAの計算

(期間内の合計値 / 期間)

2. 乗数の計算

(2 / (期間 + 1) つまり (2 / (5+1) = 33.333%

3. EMAの計算
初日のEMAを求めるには、前日のEMAの代わりに前日のSMAを使用します。

EMA = {終値 - EMA(前日)} x 乗数 + EMA(前日)
二重指数移動平均
計算
Double EMA = 2*EMA – EMA (EMA)
三重指数移動平均
計算
Triple EMA = (3*EMA – 3*EMA(EMA)) + EMA(EMA(EMA))

基礎

移動平均は、一連のデータ (一定期間の終値) を取り込み、その平均値を算出するものです。オシレーターとは異なり、移動平均はバンド内の数値や設定された数値の範囲に制限されることはありません。MAは価格とともに移動します。
どの時間足や期間を使用するかは、実施されるテクニカル分析のタイプによって様々です。しかし、常に心に留めておかなければならないのは、移動平均線にはラグがあるという事実です。これはとてもシンプルなことで、使用する期間が長ければ長いほど、ラグが大きくなります。同様に、期間が短ければ短いほど、ラグが少なくなります。基本的に、期間が短い移動平均線ほど価格に近い位置にあり、価格の動きをすぐに追う傾向があります。期間を長くすれば、データ量が膨大になり、相場の動きから大きく遅れることになります。どの期間を使うかについては、まさにトレーダーの判断に委ねられます。一般的には、20日以下は短期、20日以上60日以下は中期、60日以上は長期と定められています。

また、どの種類の移動平均線を使用するのかは、トレーダーの好みとなります。どの移動平均線もよく似ていますが、トレーダーとして違いを把握することは重要です。例えば、EMAはSMAよりもラグが少なく (直近の価格を重視する為)、SMAより変動が早くなります。しかしSMAは、直近に関わらず、全てのデータで等しい比重である為、従来のサポートやレジスタンスのような重要なエリアとより密接に関わっています。

着目点

移動平均線の一般的な活用方法を検討するにあたって、どの移動平均線を使用するかはトレーダーの判断に委ねられていることに留意してください。下記の例は、移動平均 (MA)、単純移動平均 (SMA)、指数移動平均 (EMA)、加重移動平均 (WMA) の、どのインジケーターにも当てはまります。特定の指定がない限り、これらのインジケーターの基本的な活用方法の原理には互換性があると考えられるからです。

基本的なトレンドの見極め

移動平均線を使って価格のトレンドを確認することは、最も基本的かつ効果的な使用法です。移動平均線は、すでに起こったことを「報告」し、過去のあらゆる事象を考慮した計算をするように設計されています。これこそ、移動平均線がトレンドの確認に適したテクニカル分析ツールとなる理由です。
一般的な経験則は以下のとおりです。

  • 長期移動平均線が明確に上向きの場合、強気トレンドを示します。
  • 長期移動平均線が明確に下向きの場合、弱気トレンドを示します。

長期移動平均線の計算には大量のデータを使用する為、その軌道修正には相当大きな市場の動きが必要です。全体のトレンドとして、長期MAは、急激な価格変動の影響をそれほど受けません。


サポートとレジスタンス

移動平均線のもう一つの基本的な使い方は、サポートとレジスタンスのエリアを特定することです。一般的に、移動平均線は上昇トレンドではサポートになり、下降トレンドではレジスタンスになると言われています。短期間 (20日以内) の移動平均線でも機能しますが、期間を長く設定するほど、サポートとレジスタンスがより有効に機能すると言われています。


クロスオーバー

クロスオーバーを確認するには、同じチャート上で2本の移動平均線を使用する必要があります。また、これらの移動平均線はそれぞれ異なる期間のものでなければなりません。下図の例では、50日単純移動平均線 (中期) と200日単純移動平均線 (長期) を使用しています。取引機会を示唆するシグナルが発生するのは、短期SMAが長期SMAの上または下に交差したときです。
強気のクロスオーバーが発生するのは短期SMAが長期SMAの上へと交差した時です。ゴールデンクロスとしても知られています。

弱気のクロスオーバーが発生するのは短期SMAが長期SMAの下へと交差した時です。デッドクロスとしても知られています。

しかし、トレーダーとして、これらのシグナルには本質的な欠点があることを認識しておくことが必要です。これは、1つのみならず、2つの遅行インジケーターを組み合わせることによって作られたシステムです。これらのインジケーターは両方ともすでに起こったことに反応するだけであり、予測を行うために設計されたものではありません。もちろん、こうしたシステムも非常に強いトレンドの中であれば、極めて高い効果を発揮します。強いトレンドが発生している時は、このシステムや類似のケースでも優位性が高まります。

プライスクロスオーバー

前節で説明した2つの移動平均線のセットアップに、価格という第3の要素を加えると「プライスクロスオーバー」と呼ばれる別のタイプのセットアップが生まれます。プライスクロスオーバーも、期間の異なる2つの移動平均線を使用します (前述のクロスオーバーと同様です)。基本的には期間の長い移動平均線で長期的なトレンドを確認します。そして、価格が短期移動平均線の上または下を通過し、長期的なトレンドと同じ方向に向かうと、シグナルが発生します。下図では、さきほどの例と同様に、50日単純移動平均線と200日単純移動平均線を使用しています。

強気のプライスクロスオーバー – 50SMAが200SMAの上にあり、価格が50SMAの上へとクロスしています。200SMAは強気トレンドの確認となります。価格と短期SMAがそのトレンドと同じ方向にシグナルを発生させています。

弱気のプライスクロスオーバー - 50SMAが200SMAの下にあり、価格が50SMAの下へとクロスしています。200SMAは弱気トレンドの確認となります。価格と短期SMAがそのトレンドと同じ方向にシグナルを発生させています。

サマリー

経験豊富なテクニカルアナリストであれば、移動平均線を使用する際に注意しなければならないことは既にお分かりでしょう (他のインジケーターと同様です)。移動平均線はトレンドを示す指標であり、トレンドを把握することは、非常に重要な情報です。しかし、遅行性、反応性インジケーターであることを常に意識することは大切です。移動平均線は、相場の動きを予測する上で決して最先端を行くものではありません。しかし、他の多くのインジケーターと同様に、実在してからその価値が薄れる事なく、今でも有能であることは、トレード戦略やシステムの信頼性をさらに高めることができます。よりアクティブなインジケーターと併用する際にも、少なくとも長期的なトレンドに関しては、正しい方向で取引していることを確認することができます。

パラメーター

期間

移動平均の算出に使用する期間です。デフォルトは9期間です。

ソース

各バーのどのデータを計算に利用するかを設定します。デフォルトは終値です。

オフセット

この数値を変更すると、現在の市場価格に対して、移動平均線が前方または後方に移動します。デフォルトは0です。

スタイル

MA

MAやMAラインの現在価格の、表示/非表示の切り替えが可能です。また、MAの色、線の太さやスタイルを選択することが可能です。