【ドル円】投機筋ポジション動向から見るドル円が下がらない理由ドル円が昨年2022年9月につけた143円を突破し、145円以降の水準が再び射程に入りつつある。
2023年4月以降約3ヶ月にわたってドル円はほとんど大きな下げを経験することなく円安方向の動きが継続しており、今後の動向が気になっている方も多いであろう。
そこで今回の投稿では投機筋ポジション動向から読み取ることができるドル円の底堅さの理由を共有したいと思う。
ドル円週足
以下のチャートはドル円週足にCFTC(米商品先物取引委員会)が公表している投機筋のポジション動向を重ねたものである。
(紫が円ショート、緑が円ロング、青がネットポジションの推移)
まず週間ベースの値動きを見ていくと、2023年4月以降ほとんど大きな下げを経験することなく144円まで上昇していることがわかる。
4/3週から直近6/19週までの12週間で陰線で引けたのは、3分の1に当たる4週間に過ぎない。
投機筋ポジション動向
次に下段のポジション動向を見ていきたい。
ご覧いただいてわかる通り、2023年4月以降円ショートポジションが積み上がっていることがわかる。
一方の円ロングはというと、日銀新総裁就任の4月以降しばらくは政策修正期待もあってか、円ロングポジションが少しづつ増加傾向を見せていたが、5月半ば以降は減少に転じている。
そしてもう一つ注目なのがオレンジのラインで示した未決済建玉の推移である。
こちらも4月以降ほとんど大きな落ち込みを経験することなく右肩上がりの状況である。
つまり投機筋が円ショートポジションをほとんど解消することなくここまで推移していると見ることができる。
円ショートが積み上がる一方で利益確定はほとんど入っていない、これがドル円が底堅く上昇を続けている理由の一つである。
特に日銀総裁に就任してからハト派の発言が続いている植田総裁の2回目の金融政策会合があった5月以降、円ロングが減少し始めているのは注目であろう。
個人投資家ポジション動向にも注目
外部ソースになるのでここに詳しい数字やリンクを記載することはできないが、個人投資家のポジション動向にも注目である。
くりっく365(※)が公表している個人投資家のドル円ポジション動向によると、2023年4月以降、直近6月20日時点までドル円の売り(=円買い)が買いを2倍以上上回って推移している。
つまり、機関投資家と個人投資家の売買動向が逆転している現象が4月以降発生しているということである。
以前の投稿”【ユーロ円8年ぶり高値】個人投資家のポジションと相場はなぜ逆行するのか” (下記リンク)で紹介したが、このように機関投資家と個人投資家の売買動向が逆転している場合は、引き続き機関投資家のポジション方向の動きが継続することが非常に多い。
今回も、円売りの利益確定をする必要がないと考えている投機筋の前に、こうした円買いの個人投資家のポジションが存在しているということで、(2022年よりもスピードは劣るものの)今後もドル円は底堅く、じりじりと円安の流れが継続すると見ている。個人投資家の円買いポジションがドル円を下がりにくくしていると言えなくもない。
ちなみに昨年2022年9月22日に24年ぶりの円買い介入(1回目)が行われた際は、ちょうど1週間前に、個人投資家のポジションが円買い越しに傾いているとの報道があった。さて、今回はどうなるか。
詳しい内容は以前の投稿を参照していただきたい。
6月のFOMCでは、FRBがあと1、2回の利上げを予測していることが最新のドットプロット図で明らかになった。おそらくその利上げが終了するまではドル円の底堅さが続くのではないか。
その最後になるかもしれない利上げの後に、ドル円相場がどうなるのか?
その頃になったら再び最新のポジション動向とともにアップデートをしたいと思う。
Commitmentsoftraders
【ドル円】投機筋の円ショートポジションは減少傾向チャートはドル円週足にCFTC(アメリカ商品先物取引委員会)の投機筋ポジションを表示したものです。
(パープルのバーが円のショートポジション、グリーンが円ロング、ブルーはネット、アンバーはオープンインタレスト)
チャート1 円ショートポジションの推移
チャート2 円ロングポジションの推移
チャート1からは、5/9週以降円ショートポジションが減少していること、及び直近3週間でオープンインタレストが減少していることがわかります。
またチャート2からは直近3週間で円ロングポジションが増加していることも確認できます。
ショートが減少し、ロングが増加してオープンインタレストが減少ということは、ショートポジションの決済が入り始めていると見ることができます。
6/17には日銀の金融政策発表も行われ、ちょうどこの前にはイールドカーブコントロールに何らかの修正がされるのではという金融政策の修正観測も出ていたことから、円ショートポジションを解消する動きや金融政策修正を見込んだ円買いの動きが出たのかもしれません。
最近のドル円を取り巻く材料には、主に
①日米金融政策の乖離とそれに伴う金利差拡大=>円売り圧力
米国リセッション懸念から来る
②米国株の下落=>リスクオフで円買い圧力(ただしドルも強い)
③米国債の買い(特に10年)=>債権利回り低下=>ドル円下押し圧力
の3つがあります。
①に関しては前述の日銀の金融政策が、蓋を開けてみれば何も変更なしということで、これまでと同様の環境が継続することになります。
ドル円の底硬さにも特に変わりはありませんが、②③の要素も含めてこれから数週間の円ポジションがどのように変化していくか引き続き注目したいところです。
【ドル円🇺🇸🇯🇵】黒田ラインでの金融緩和継続発言/126円突破後のシナリオドル円が126円を突破してきました。この投稿では黒田ラインと呼ばれる125円突破の意味と今後のシナリオについて考えてみたいと思います。
・黒田ライン突破の意味
・今後のシナリオ
黒田ライン突破の意味
2015年、当時ドル円が125.85円をつけた時、黒田日銀総裁が「これ以上の円安は想定していない」と発言したことから、125円水準は黒田ライン/シーリング(天井)と呼ばれています。
それから約7年後の2022年4月、まさにドル円レートが125.85円間際にある時に、黒田総裁は「現在の強力な金融緩和を粘り強く続けていく」と発言。直後にドル円は円安に振れ126円を突破しました。
時を隔てて、同じ総裁が、同じレートで、「現在の強力な金融緩和を粘り強く続ける」と発言されたのは非常に大きな意味を持つと見ています。
先月3月28日に125円をつけた直後に3円近くの調整が入ったことを踏まえれば、このラインが警戒されていたことは明らかであり、そんな中で出た上の発言は、(金融緩和継続=為替誘導ではないものの)円売りを仕掛けている勢力から見れば、まだ日銀は出てこない、まだ売れると捉えられるのではないでしょうか。
今後のシナリオ
チャートはドル円の月足です。
仮に4月の月足が125円ブレイクで確定したとすると、月足上の次の節目は心理的節目である130円と2002年高値である135円です。
120円が特に目立った抵抗もなくブレイクされたことを考えると、135円の方がチャート的にもより意識されやすい価格かもしれません。
続いて投機筋のポジションを見ていきたいと思います。
ドル円週足にCFTC投機筋ポジション表示(チャート下部の紫バーが円売りポジション)
注目ポイントは2点。
円ショートポジションは引き続き増加しつつあることと、オープン・インタレスト(未決済建玉,黄色の折れ線)が減少していないことです。
円ショートポジションが増加傾向にある中でオープン・インタレストが減少していないということは、円ショートの利確が入っていないと読むことができます。
これは昨今のドル円の上昇が押し目を作らずに一直線に上がっている動きと整合します。誰も利確しないから下がらないというわけですね。
以上を踏まえると今後も円安は続き、130円や135円を目指す動きが現実的になると見ています。
ただし、前回の投稿(以下リンク)でも言及した通り、円ショートポジションのピークアウトによる大きな調整が入ってくる可能性には注意です。
ドル円の転換と円ショートポジションのサイクル
もう一つ注目すべきは財務省の動向でしょう。
円安阻止のための為替介入の可能性の報道もちらほら出始めていますが、実際に介入するかどうかの判断を行うのは財務省。
127円、128円、130円と節目を次々と超えてくるような展開になれば、それらのタイミングで出てくるであろう財務相や財務官の発言には要注意です。警戒感から円売りの利益確定で大きく下げる可能性も考えられます。