【米国株】S&P500が強気相場入り このまま最高値を更新する確率は◯◯% 米国株の代表指数であるS&P500が昨年10月につけた安値から20%上昇し、強気相場入りを果たしました。
このまま強気を維持して最高値を更新するまでに至るのか気になっている方も多いかと思います。
そこで今回は、過去に弱気相場から強気相場への転換を果たし、そのまま最高値を更新したケースがどのくらいあるのかを調べた結果をシェアしたいと思います。
S&P500 月足(1974年〜)
今回は1974年の第一次オイルショック以降を対象に弱気相場から強気相場への転換を調べました。
チャートはS&P500の月足に主要イベントをプロットしたものです。
中段は当時の直近高値からの下落率(赤)、直近安値からの上昇率(緑)を表します。赤の2本の水平線は上昇率・下落率20%のラインです。弱気相場となったポイントを緑の丸で示しています。
下段はFRBの政策金利です。
弱気相場入りから強気相場へ転換した事例は、2022年~23年を除いて10回ありました。
以下でそれらの動きを詳しく見ていきます。
1.第1次オイルショック
1974年10月に底値をつけた後、20%上昇し強気相場入り。そのまま第2次オイルショックを迎えますが、1974年10月の安値を割ることなく最高値を更新する流れへ続きます、
2.第2次オイルショック
第1次オイルショック後の上昇から再び弱気相場入り。1978年3月に底値をつけた後は強気相場転換し、およそ2年後に最高値更新。
3.金利上昇による米国リセッション
第2次オイルショックによるインフレを退治するためにFRBが異例の強行利上げを行い、政策金利は1980年3月には20%近くまで上昇。
その結果米国経済はリセッション入りし、1982年8月に底値をつけるまで弱気相場が続きます。
そのあとは上昇に転じ、約半年後の1983年1月に最高値更新。
4.ブラックマンデー
たった1ヶ月でSP500が35%近く下落した1987年10月は、その月の安値を割ることなく、約2年後の1989年7月に最高値更新。
5.湾岸戦争
1990年10月に底値をつけた後、5ヶ月後に最高値更新。
6.LTCM(ロングタームキャピタルマネジメント)破綻
1998年10月に底値をつけた後は反転上昇し、2ヶ月後には最高値更新。
7.ドットコムバブル崩壊
2000年始めから2001年9月までの弱気相場。
2001年9月の底値から一旦は強気相場入りを果たすも、今度はワールドコム・エンロン会計詐欺が発覚し、再びドットコムバブルの安値を割る弱気相場入りとなりました。
この時は9.11も重なり、米国にとっては暗い新世紀の幕開けとなった時代でした。
8.ワールドコム・エンロン会計詐欺
2002年7月に底値をつけた後は強気相場入りを果たし、5年後の2007年には最高値を更新します。そして後続のリーマンショックを迎えることになります。
9.リーマンショック
ワールドコム・エンロン会計詐欺後の上昇相場で記録した2007年10月の最高値から57%の下落。
2009年3月に底値をつけるまで1年半近く下落が続きました。そこからは反転上昇し、リーマンショックから約5年後の2013年4月に最高値を更新します。
10.コロナショック
リーマンショックでの底値をつけた2009年3月以降、SP500は毎年最高値を更新する長期上昇トレンドにありましたが、そんな中発生したのが2020年のコロナショックです。
ただ、コロナショックの直後にFRBがゼロ金利政策を取ったことで相場はすぐに上昇転換。結局2020年も前年に続く最高値更新となりました。(2018年の世界同時株安は見方によっては弱気相場とみなす考えもあり。)
以上を整理すると、弱気相場から強気相場転換を果たし、そこからさらにもう一度安値を更新したケースは10回中1回のみ(#7)。
確率的には90%が最高値更新を果たしたことになり、今回の強気相場転換にも期待を持たせる動きではありますが、そうは問屋が卸さないのが相場の難しいところであり、面白いところ。
以前の投稿"【米国株】半値戻しは強気のサイン? SP500の弱気相場における半値戻し50年の傾向"では、S&Pが直近安値から半値戻しを達成した後に再び安値を更新するケースは、過去50年間で1回だけだったという紹介をしました。
ですが、2022年の弱気相場においては2022年8月に当時の直近安値から半値戻しを達成した後は、再び安値を割る展開となりました。(下記リンク参照)
では、今回の強気相場の継続性では何が懸念となるのでしょうか?
一つ確実に言えることは、FRBが政策金利を高水準で据え置き続けるかどうかでしょう。
先程のS&P500の月足チャートを政策金利と関連付けて見てみましょう。
<再掲>
前述の10回の強気相場転換において、最高値を付ける過程で政策金利が上昇または横ばいにあったのは、
2.第2次オイルショック
3.金利上昇による米国リセッション
4.ブラックマンデー
6.LTCM破綻
の4回。
それ以外は全て利下げ局面にあるか、またはゼロ金利政策/超低金利政策が取られていたことが特徴です。
特に21世紀に突入してからの弱気相場から強気相場への転換事例を見てみると、全て利下げ局面、ゼロ金利政策/超低金利政策の下での最高値更新となっています。
2023年5月時点のFRBの政策金利5.25%(青の破線水平線)を超えた状態で最高値更新した事例は、21世紀以降はありません。
2001年以降は世界的に超低金利政策が取られており、株価にとってはポジティブな環境が揃っていたことは間違いなく考慮すべき要素の一つでしょう。
単純に上昇率と下落率の推移だけで見た場合とは状況が異なり、諸手を挙げて現在の強気相場を歓迎できるかというと、首を傾げざるを得ません。
ここ数ヶ月は経済指標が弱気な結果であったり、インフレ指標に鈍化が見られると利上げ停止期待や一部では利下げ観測まで出て、株上昇やドル安の動きにつながることがあります。
一方で、FRBの高官からは口すっぱく、「利下げはない」、「政策金利を一定期間据え置く」という発言が出ている中、この強気相場がどこまで続くかのか、今後の行く末が非常に楽しみなところです。