【ドル円】米金利上昇一服。ドル円は間も無く調整局面入りか。チャート上段:ドル円
チャート中段:米5年国債利回り
チャート下段:米政策金利先物2022年11月限月
上昇を続ける米国債金利だが、一旦の頭打ちを迎えそうだ。
先週金曜日に、米政策金利先物である「ZQ11月限月」は2.605%の高値を付けた。
このことで、米金利マーケットは年内FOMCにおける最速での中立金利2.4%までの利上げを折り込んだことになる。
今後年内のFOMCにおける、以下利上げスケジュールを折り込んだ。
2022年5月のFOMC:0.5%利上げ
2022年6月のFOMC:0.5%利上げ
2022年7月のFOMC:0.5%利上げ
2022年9月のFOMC:0.5%利上げ
2022年11月のFOMC:0.25-0.5%%利上げ
(2022年11月時点FFレート:2.5%-2.75%)
これを受け「米5年国債利回り」も金曜日に、2018年10月以来となる3%台を記録した。
これにより材料出尽くしで、米金利マーケットの上昇は一旦の頭打ちとなる可能性が高い。
これまでにご説明の通り、現在のドル円相場の円安はこの「米金利上昇」に牽引されている。
よって米国債金利上昇の頭打ちと共に、ドル円相場も間も無く一旦の調整局面を迎える可能性が高い。
ただあくまで「一旦」と言うことを強調しておきたい。
と言うのも来月3-4日のFOMCにおいて、今年のマーケットの最大のテーマとなるFRBのバランスシート縮小「QT」について発表される見通しだ。
前回のQTは2017年10月から開始され当初は、月100億ドルペースでの資産償却から始まった。
(最終的には月500億ドルのペースまで拡大された。)
だが今回のQTは開始時より月900億ドルペースでの資産償却が予想されている。
史上まだ誰も経験をしたことのない、過去最大の金融引き締めだ。
QTの実施が進むにつれ、影響が米中長期国債マーケットに飛び火し、予期せぬ米中長期国債価格の下落(金利の上昇)に繋がるということも十分に考えられる。
その際には再度、ドル円相場の円安をめぐる攻防も再燃するだろう。
ZF
【ドル円】分析③ 日米金利格差チャート上段:ドル円
チャート中段:日米5年国債利回り格差(ドル円相関)
チャート下段:日米3ヶ月国債利回り格差(ドル円相関)
ドル円と日米金利格差は歴史的に相関関係が強い。
米国金利が上昇すればドル円は円安に進み、米国金利が低下すればドル円は円高に進む。
ではここでいう日米金利格差とはどの金利をみれば良いのだろうか?
結論を言うとそれは「日米5年国債利回り格差」だ。
「日米5年国債利回り格差」が最もドル円と相関関係が強いと言われている。
上記のチャートをご覧いただきたい。
中段が「日米5年国債利回り差」と「ドル円」の相関係数。
下段が「日米3ヶ月国債利回り差」と「ドル円」の相関係数を表している。
チャートを見て分かる通り、
中段チャートの5年債相関係数は「0」よりも上、つまりドル円と一定の正の相関関係があることがわかる。
対して下段チャート、3ヶ月債相関関係を見るとそこにはドル円との間に相関関係は存在しない。
3ヶ月国債の金利は直近の政策金利に近い数値となるが、つまり直近FOMCで利上げが行われた、行われなかったということはドル円トレードの参考にならないということが分かる。
米5年国債利回りは将来の金利予測をもとに価格が決まる。
将来の金利予測はどの様に確認するかというと、米政策金利FFレート先物を見れば分かる。
意外に知られていないが米政策金利FFレートは先物商品として日々マーケットで取引されている。
(商品シンボル:ZQ)
昨日2022年4月8日(金)時点、米政策金利FFレート先物「ZQ12月限月」は2.45%をつけている。
つまりこのことをFOMCに置き換えると2022年、残り6回行われるFOMCにおいて3回の0.5%利上げ、残りは0.25%の利上げをマーケットは折り込んでいることになる。
ドル円と相関関係の強い、米5年国債金利が更に上昇するにはこれ以上強い、タカ派なFOMCでの利上げが必要となってくる訳だが、そうした強い利上げの可能性はあるだろうか?
恐らく、よりタカ派な、強い利上げがFRBにより行われる可能性は十分にあるだろう。
FRBとしては、現在既に危険値に達しているインフレ率をいち早く沈静化させたいという思いがある。
その中で兎に角、早いうちに政策金利を中立金利となる2.4%あたりまで引き上げたいという考えがあるはずだ。
その場合、今後のFOMCでは
2022年5月のFOMC:0.5%利上げ
2022年6月のFOMC:0.5%利上げ
2022年7月のFOMC:0.5%利上げ
2022年9月のFOMC:0.5%利上げ
2022年11月のFOMC:0.25%利上げ(政策金利2.5%到達)
2022年12月のFOMC:0.25%利上げ(年末政策金利2.75%)
といったシナリオが考えられる。
実際にFOMCでこうした利上げが行われるかは別として、金利先物市場では一旦この水準を折り込みに向かうことが十分に想定できる。
この場合、米5年国債金利は3.0%を超える水準に達する可能性が高い。
(米5年国債金利、現時点は2.759%)
ということはまだドル円は円安の余地を残しているということだ。
但し、米5年国債金利の上昇余地も2.759% → 3.0%強程度で、前回のドル円分析②「日本経常収支」と併せて考えても精々ドル円130円あたりまでの押し上げ効果しか無いように思われる。
ここで誤解の無いように、ドル円は130円が売り時だと言いたい訳では無い。
日米金利差の観点から見ると、米5年国債3%辺りをつけた水準がドル円の売り時だという事だ。
その時、ドル円が128円なのか、130円なのか、132円なのかということは分からないし問題では無い。
話は逸れるが、今後一度のFOMCで0.75%以上の利上げが行われる可能性はあるだろうか?
FOMCでの一度に0.75%幅以上の利上げは1994年以降行われておらず、どれだけ経済に悪影響を与えるのかは未知数だ。
よって流石にFRBもそれには踏み切れず、0.75%幅の利上げは今後も無いものとして考える。
(もし0.75%以上の幅で利上げが行われる場合には投資シナリオを全て再考しなければならない。)
以上、これまで数回に渡りご説明してきたドル円のファンダメンタルズ「経常収支」「日米金利差」からは、ドル円はまだ円安の余地を残しているが、その伸び代はそれほど多く無いことが分かる。
ただ申し訳ないが、これで話は終わりでは無い。
次回5月3-4日で発表される見通しのFRBのバランスシート縮小「QT」について触れない訳にはいかない。
今週4月6日に発表されたFRB議事要旨から、5月よりQTが開始される見通しで、その規模は前回2017年の倍額規模となることが明らかとなった。
この来月以降のQTは場合によっては、国債価格の暴落を招き、米5年国債金利を4%、5%と押し上げてしまう可能性がある。
その場合にはドル円は140円、150円台が視野に入ってくるだろう。
ドル円140円、150円台が起こりうるとしたら、このQTによる米国債金利急騰がメインシナリオだろう。
少し長くなってしまったので、今後のQTに関する分析・考察はまた次回書いていきたい。
それとその前に、米政策金利FFレート先物の見方についての詳しい記事を書くかもしれない。
米政策金利FFレート先物をあなたのトレードウォッチリストに入れておくことは間違いなく役に立つ。
あなたが株式トレーダーだろうが、FXトレーダーだろうが、デイトレーダーだろうが、スイングトレーダーだろうが、日々のFFレートの動きを見ることは間違いなく参考になるだろう。
このことについても詳しい解説の投稿を行おうと思う。
尚、私の投資アイデア投稿はファンダメンタルズ分析とは、どのように行えば良いのかということをお伝え出来ればと思い執筆している。
ファンダメンタルズ分析は非常に重要だが、そのやり方はあまり知られていないように思う。
どういった観点からファンダメンタルズ分析を行えば良いのかということを学んでいただくための教材となる自負はある。
ファンダメンタルズ分析を学び、専門性を高めて欲しい。
特に、若い次世代のトレーダー育成に繋がれば嬉しい限りだ。
暫くこのトレーディングビューで投資アイデアの執筆を続けていこうと思う。