方向性指数 (DMI)

定義

方向性指数 (DMI) は、実際には3つの個別のインジケーターを1つにまとめたものです。方向性指数は、平均方向性指数 (ADX)、プラスの方向性指標 (+DI)、マイナスの方向性指標 (-DI) で構成されています。ADXの目的は、トレンドの有無を定義することです。方向性は全く考慮されません。他の2つの指標(+DIと-DI)はADXを補完するためのもので、トレンドの方向性を決定する目的で使用されます。3つすべてを組み合わせることで、テクニカルアナリストは、トレンドの強さと方向性を特定し測定する方法を手に入れることができます。

歴史

DMIは、J・ウェルズ・ワイルダーによって作成され、彼の著書「ワイルダーのテクニカル分析入門」の中で紹介されました。この本は1978年に出版され、現在では定番となっている相対力指数 (RSI)、アベレージ・トゥルー・レンジ (ATR)、パラボリックSARなどのインジケーターも紹介されています。これらのインジケーターと同様に、DMIは今でも広く使われており、テクニカル分析の世界では非常に重要な意味を持っています。

計算

DMIの計算は、実際には2つの部分に分けることができます。1つ目は、+DIと-DIの計算、2つ目はADXの計算です。+DIと-DIを計算するには、+DMと-DM(方向性)を見つける必要があります。+DMと-DMは、各期間の高値、安値、終値で計算されます。計算式は以下の通りです:

当日高値 - 前日高値 = アップムーブ
前日安値 - 当日高値 = ダウンムーブ

アップムーブ > ダウンムーブ かつ アップムーブ > 0 の場合、+DM = アップムーブ。それ以外は +DM = 0
ダウンムーブ > アップムード かつ ダウンムーブ > 0 の場合、-DM = ダウンムーブ。それ以外は -DM = 0

現在の+DMと-DMが計算されると、ユーザー定義期間の値に基づき+DM/-DMのラインを計算し、プロットすることができます。

+DI = (+DM / Average True Range) のEMAの100倍
-DI = (-DM / Average True Range) のEMAの100倍

+DIと-DIが計算されましたので、最後のステップはADXの計算です。

ADX = (+DI - -DI) / (+DI + -DI)の絶対値の指数移動平均の100倍

基礎

DMIは0~100の間の値を持ち、現在のトレンドの強さを測定するために使用されます。+DIと-DIは方向性を測定するために使用されます。これらを組み合わせる事でいくつかの貴重な洞察が提供されます。一般的な解釈としては、強いトレンド(ADXが25を超える場合。但しアナリストの解釈より異なります)の間に、+DIが-DIを上回っている場合は、強気相場と定義されます。-DIが+DIを上回っている場合は、弱気市場と考えられます。

考慮すべきことの一つは、どのDMI値を利用するかや、強さや潜在的なシグナルの判断基準は、トレーダーの解釈次第であるということです。許容値は、調査対象の金融商品によって変わる可能性がある為、対象の金融商品の過去分析を行う事が賢明です。テクニカルアナリストは、過去の事例に基づいてより良い判断を下すことができます。

利用目的

トレンドの強さ

トレンドの強さの分析は、DMIの最も基本的な使用方法です。トレンドの強さを分析するには、+DIや-DIラインではなくADXラインに焦点を当てる必要があります。ワイルダーは、25以上のDMI値は強いトレンドを示し、20以下の値は弱いトレンド、またはトレンドが存在しないと考えていました。また値がこれらの2つの間にある場合、トレンドは判断できないとみさなれます。しかし前述のように、経験豊富なトレーダーは、すべての状況でそれら25と20の値を当てはめることはありません。何が本当に強いトレンドなのか、もしくは弱いトレンドなのかは、対象の金融商品によって異なりますので、過去の分析が適切な値を決定するのに役立ちます。

またワイルダーは、通常株式よりもボラティリティが高く、強いトレンドが出る通貨やコモディティで使用するためにDMIを開発した事を頭に留めておく必要があります。この事は、トレンドの強さの分析だけでなく、生成されるシグナルで適切な値を決定するための要素となります。

交差

DIの交差は、DMIによって生成される重要な売買シグナルです。それぞれの交差には特定の条件があります。

強気のDIクロス
  1. ADXが25を超えている必要があります(強いトレンド。この値はトレーダーにより決定されます)。
  2. +DIが-DIを上に交差。
  3. ストップロスは当日安値に設定します。-DIが+DIを上に交差した場合でも、安値が更新されていない場合には、シグナルを放棄しないで下さい。
  4. ADXが上昇すると、シグナルは強化されます。
  5. ADXが上昇した場合、トレーダーはトレーリングストップを利用する必要があります。

弱気のDIクロス
  1. ADXが25を超えている必要があります(強いトレンド。この値はトレーダーにより決定されます)。
  2. -DIが+DIを上に交差。
  3. ストップロスは当日高値に設定します。+DIが-DIを上に交差した場合でも、高値が更新されていない場合には、シグナルを放棄しないで下さい。
  4. ADXが上昇すると、シグナルは強化されます。
  5. ADXが上昇した場合、トレーダーはトレーリングストップを利用する必要があります。

サマリー

方向性指数 (DMI) は、ワイルダーが提供するもう一つの非常に価値のあるテクニカル分析インジケーターです。トレンドの強さと方向性という非常に複雑なテーマを、非常にシンプルで分かりやすいビジュアルで計算します。DMIを使用する際の重要なポイントは、DMIが質の高い情報やトレードシグナルを提供することはできても、それをマスターする事は簡単ではないということです。DMIを本当に最大限に活用するためには、テクニカルアナリストは、インジケーターの使用方法を継続的に研究して調整する必要があります。DMIがどのように機能するかやその能力についての知識を十分な量の過去分析や経験と組み合わせることで、トレーダーはDMIを全体的なトレード戦略に加えることができるようになります。

パラメーター

ADX平滑化

平準化された要素であるADXの計算に用いられる期間(デフォルトは14)です。

DIの期間

DIの計算に用いられる期間(デフォルトは14)です。

スタイル

ADX

ADXの値を表示するラインの可視性を切り換える事ができます。ADXラインの色や太さ、ビジュアルスタイル(デフォルトはライン)を選択する事も可能です。

+DI

+DIの値を表示するラインの可視性を切り換える事ができます。+DIラインの色や太さ、ビジュアルスタイル(デフォルトはライン)を選択する事も可能です。

-DI

-DIの値を表示するラインの可視性を切り換える事ができます。-DIラインの色や太さ、ビジュアルスタイル(デフォルトはライン)を選択する事も可能です。

小数点以下の桁数

インジケーターの値を四捨五入して残す小数点以下の桁数を設定します。この数値が大きいほど、インジケーターの値の小数点以下の桁数が多くなります。