米国の金利が大きく動いた昨年2020年3月以降の政策金利 (FF金利) と長期金利 (米国債10年利回り) と為替の関係を時系列で考察します。
通貨ペアとしてユーロドルの動きと比較しています。当然ながらユーロの動向も関連して来るので、本来であればドルインデックスで比較した方が合うのでしょうが、関連度が高いと感じユーロドルを用いています。
【2020年3月】
コロナ禍をきっかけとして米国の政策金利が大きく動きました。FF金利の誘導目標は0.00~0.25%まで落とされ、長期金利とユーロドルは大きく上下に揺さぶられました。長期金利は過去最低を記録しユーロドルも2018年からの下降トレンドでの最安値を更新しました。
【2020年4月〜2020年12月】
政策金利が低位で維持される中、長期金利は徐々に安定し0.5〜1.0%の間で推移しました。短期・長期の金利が下がったことでユーロドルは5月から急上昇を繰り返し、月足で9月10月以外は陽線となり上昇トレンドに転換、12月30日には2018年以来の1.23台に乗せました。
【2021年1月】
1月6日ユーロドルは直近の最高値を記録、同じ日に長期金利は1.0%を越えて続伸、ユーロドルはここからの下落以降上ヒゲを付けて1.22台にしか戻れていません。長期金利はこの後約3ヶ月ほど一気に伸び続けました。
【2021年2月〜現在】
長期金利が一時1.6を越えるところまで急上昇し、その対応に関する3月のFRB議長発言をきっかけにしてついにドルが大きく下落しました。昨年からのサポートライン100日移動平均線を割り、200日移動平均線手前で反発しています。
【所感】
あたり前と言えばあたり前なのですが、金利と為替には高い相関性があり、ドルストレートの通貨ペアはユーロドルも含めて大きくドルの動きに影響されています。
ユーロドルの2020年3月までの下降トレンドから上昇への転換は、まさに金利の影響であり、金利の変動から為替に実際影響するまでは少しタイムラグがあると感じます。
2020年は4月以降長期金利も1.0%以下の低位で安定した状態でありユーロドルが上昇するための下地が整っていました。しかし、長期金利は2021年1月以降に急上昇し状況は変わりました。今後も金利上昇要因として、追加経済対策やコロナ禍からの経済の回復 (GDP、雇用、物価など) があり、さらに上昇する可能性が高いでしょう。
今年1月からの長期金利のシグナルは、ここに来てドル高ユーロドル下降という動きに繋がりつつあると感じます。
長期金利1.6%ほどだった2020年2月辺りのユーロドルは1.07〜1.10ほどでした。それではこの水準までユーロドルは下げるのでしょうか。それほど単純では無いと思っています。
確かに金利の上昇はドル高要因であり、今後また急な上昇の動きをした場合株価を押し下げリスクオフのドル買いになることもあると思います。しかし、バラマキ政策でのドル安や景気上向きでの株高リスクオンのドル売りも出てくると予想され、一方向に向かうことも無いのではないかと思います。
そうなると、上は今年2月の1.2243、下は昨年11月の1.1603あたりのレンジで推移し、今後の政策金利での利上げの折り込み具合で、どこかのタイミングで下にブレイクするのではないでしょうか。もちろんコロナ禍に匹敵するような経済危機が今年再度起きないという前提になります。