米国株の大暴落がバブルの崩壊なのかどうか

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年初来から始まる米国株の大暴落がバブルの崩壊なのかどうかを種々の背景をもとに考えてみた。(2022年5月29日現在)
結論としては残念ながらバブルの崩壊であり、その低迷は長期化するいう予想になった。

分析の観点は以下の3点。
①金利の影響
②国力の影響

■金利の影響
一番上の図はSP500を世界恐慌が起こった1930年ごろまでさかのぼったものを対数表示したものである。
チャネルの直線性が分かりやすくなるようフィボナッチチャネルを重ねてある。
その中に株価に影響を与えた各時々の出来事を記してある。
続いて2段目グラフは政策金利、米国10年債利回り、インフレ率を示し、
それらから名目金利からインフレ率を引いた実質金利(もどき)を算出したものが3段目の図である。

これらのグラフから分かることは、まずインフレを抑えるために始めた利上げは現状のインフレ率に対して極めて少ないということである。
第1次・第2次オイルショックのあった1970年代のそれを見ると、跳ね上がったインフレ率に追従するように政策金利の上昇がなされていた。
一方で現在の(および目先予定されている)政策金利はインフレ率に対してほとんど追従できていない。
政策金利を引き上げたからと言って瞬時に名目金利が上がるわけではないため、インフレを抑制できる程度に金利が上昇するには現状予定されている以上の利上げが繰り返し実施されることが予想される。
今現在は株価の様子を見ながら、下がりすぎたら利上げを緩めるといったオペレーションを取っているため、しばらくはインフレ優勢のまま推移するであろう。
そのためインフレが正常に戻るまでは利上げの緩急を繰り返し長期のレンジ相場になると考えている。
これはオイルショック期の名目金利が2度マイナスになり、その期間の株価が長期のレンジ相場となっていたことからも想起される。

■国力の影響
続いて本稿のテーマであるバブル崩壊かどうかというのを考えるために、ここでのバブルの定義を決めておく。
Wikiの文言より一言でまとめると「本当の経済力を超えて株価が跳ね上がっている状態」と定義する。
そしてここでいう本当の経済力(国力)を示す指標としては実質GDPを採用する。

実質GDPはSP500のグラフに重なるように赤線で示してある。これもSP500と同様に左縦軸で対数表示している。
なお重ね方は厳密さに欠けるものの、なるべくSP500と重なるよう縦軸を調整し、視覚的に相関が見やすくなるようにしてある。

この図を作って気づいたショッキングな事実は、2007年のリーマンショックを境に、明らかに実質GDPの伸びが鈍化しているということである。
1955年にベトナム戦争が始まったころにはチャネル内の比較的バブリーな領域を推移していたが、若干弱めだったGDPも途中から加速して、1969年ごろまでは50%ラインを割ることはなかった。
なおこの時はGDPラインに対してそこまで大きく株価が跳ねなかったため、バブリーとは表現したものの、崩壊が起こるような定義通りのバブルではなかった。
他方2000年頃のITバブル時はチャネル的には最大のバブルだったが、その崩落も50%チャネルラインに支えられて止まっている。ITバブルは1995年頃からGDPに対して株価だけが急騰しているので、定義に対して明確にバブルだったと言えるだろう。
一方で近年のチャートはというと、GDP成長率がこのままではチャネル外に出てしまうのではないかという恐れを感じさせるほど鈍化している。そのうえで株価はGDPラインに対して極端に乖離している。
(上海のロックダウンが終わり半導体不足が解消し、近い将来やってくるであろう5G普及やメタバースの恩恵で復活することを祈っているが。)
そのため実質GDPとの比較による乖離率および成長率的には、ITバブルとベトナム戦争初期を足したような様相を呈している。
そのため定義的にはバブルであり、崩壊する公算が大きい。しかもGDPは23.6%ラインあたりに位置しており、今のレートで延長すると、株価もそれに向けて50%ラインを下に割り込む可能性も十分考えられる。
仮にGDPラインをそのまま延長するといずれグレーの0%ラインと重なり、株価はチャネル内をぎりぎり維持するとすると今の株価を正常に超えるのは2037年頃になる。

以上が今の暴落がバブルの崩落だと考えた理由である。しかし後半のGDPラインはあくまで50%チャネルラインとなるべく重なるように描画した結果導かれた推論であり、0%-100%ラインに上下端が重なるよう軸調整するとまた違った推論もできるため、一つの考え方程度に参考にしていただければ幸いである。
ノート
誤:分析の観点は以下の3点。
正:分析の観点は以下の2点。
ノート
誤:オイルショック期の名目金利が2度マイナス
正:オイルショック期の実質金利(もどき)が2度マイナス
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