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221127 米国経済現状分析

SP:SPX   S&P500指数
最近市場ではまた楽観ムードが広がりつつある。理由はご存じの通りインフレがピークアウトしたように見えてきたからだ。
久々の投稿となってしまったがここで再び米国経済の現状を確認しておこう。

最上段のチャートでは現代のSP500の最高値に過去の大暴落時の最高値をオフセットをかけて重ねている。
10/13のPCI発表時に一瞬底をついた後に急浮上して今に至る。
チャートを一目見ただけでも分かるが、ちょうど斜めの抵抗線に接するあたりまで上がってきたのでまた暴落を警戒し始める時期に来ている。
金融サイクル論に習うと下記のようにちょうど今が中間反騰にあたるのかもしれない。

   「逆金融相場」 -> インフレ鈍化 -> 「中間反騰」 -> 失業率/企業業績悪化 -> 「逆業績相場」

青線の第一次OSのチャートだけ一時的にこの斜めの抵抗線を大きく超えているのが見て取れる。
これは当時インフレがピークアウトして見えたときにFRBがFF金利を下げたときに起こっている。
しかしその後再びインフレが加速再開してしまったので現FRBは当時のこれを失策とみなし、同じ轍は踏まないと明言していることは周知のとおりである。
そう考えるとチャート的にもファンダメンタル的にも、この時のようなレベルの中間反騰にはならず(させず)また近いうちに下落していくつもりで見ておいた方が安全そうである。
図示していないがSP500はちょうど先日11/24に200日移動平均線にぶつかりレンジに入っている。
なお日足で見てみると斜めの抵抗線にぶつかるのは4100ポイントあたりであり、まだ少しだけ上昇する余地は残っている。
過去の大暴落の軌跡を参考にすると最高値から25%以上落ちたところから暴落が加速している。
ドットコムバブルとリーマンショック時のチャートを現代に当てはめるとこの暴落は次の12月に始まることになる。
リーマンショックのチャートに沿って進むと来年の5月に大底をつけることになるが、この時はチャート的に下がってきたところで下にブレイクアウトしていた。
今回は目下上昇気流の中にいるため、12月に何かがあっても一発でブレイクアウトすることは考えにくい。
前回の下降トレンドの傾きを当てはめてみると12月に下落開始した場合、-25%ラインを下回って暴落するのは来年の1月ごろと見積もれるが果たしてどうなるか。

ところでインフレピークアウトというが、インフレ率がプラスである以上、物価は上がり続けていることに注意したい。
ピークアウトという響き的にはあたかも高すぎた物価が下がってきたかのように錯覚しそうになるが(私だけ?)
実際には正の値である以上、それはただの高止まりである。
2段目の図の前年比のグラフだけ見ると視覚的に山を下りてきたように見えてしまうので、誤認防止のために前月比も並記しておく。
前年比だと一年前の物価上昇率が今の物価上昇率より急な場合、相対的に今のインフレ率がピークアウトして見える。
一方で前月比では正の値が続いている限り積分的に物価は毎月加算されていることになる。
丸を付けたあたりで確かに一度0%付近まで落ち着いたが、再び正の値に戻っていることに注意されたい。
つまるところアメリカの物価はいまだ高い水準を維持しており、賃金水準が追い付かない限り高い食費等の苦しい生活は続く。

3段目に失業率を示している。前回の記事で示したようにここ最近は歴史的な消費者マインドの低下が起こっており、今後失業率が増加する可能性が高いことを示した。
案の定今月に入ってアマゾンをはじめとする様々な企業の大規模解雇のニュースが出てきている。
ただいきなり明日から解雇とはならず、もちろん段階的に解雇されるため、失業率に大きく反映されるのは次回か次々回かは分からない。
一方で来月12/2の予想失業率は3.7%で前回と同じ予想になっているようだが、これらのニュースを見てこの数字を信じている人はもはや多くないだろう。
もしやたらと高い失業率が発表されれば逆業績相場に向けた最初のトリガーになりうる。

ここで前述のインフレが米国民にどれぐらい痛手となっているのかを別の角度から確認するため、4段目に貯蓄率を示した。
Investopediaに書かれた貯蓄率の定義を見る限り、日本の定義と同様に下式で定義される。
   貯蓄率 = 貯蓄÷可処分所得 = (手取り-支出)/手取り = 1 - 支出/手取り
ここでいう貯蓄とは手取りからクレジットカードの支払いなどを引いたものであり、残高としては現金だけでなく投信などの投資分も含まれているようだ。
※貯蓄率は月々どれぐらい貯蓄に回せるかているかのレートであり、これまでためてきた貯金トータルが分子になるわけでないことに注意。
つまり貯蓄率を見ると、直近ではどれぐらい銀行に現金を預金できたかを表すだけでなく、投信含めてどれぐらい株を買う力があるのかを見る指標にもなると考えられる。
貯蓄率が下がるには上式より手取りに対して支出が大きくなる必要があるが、これが大きくなる要因としては次の3つがある。
  ①消費者マインドが高く、ガンガンお金を使える。
  ②支出は変わらず不景気で手取りが減る。
  ③手取りは変わらないのに物価上昇の影響で支出が増える。
今回については①ではないのは既知である。また下段に示した企業収益の統計的にもまだ前年比プラスを維持しているので②もない。
消去法的に、また直感的にも高インフレで③の影響で貯蓄率が下がっていると考えるのが自然だろう。
なお本来は貯蓄があれば自発的な退職が増える。お金の余裕があれば大学に入り直したりする人が増えるためである。もちろんFIREもしかり。
これも前回記事で述べたが、貯蓄があれば自発的失業者が生まれるため失業率の期待値は0にはならない。
そう考えると現状の低すぎる失業率は景気がいいのではなく、単にお金に余裕がないことの裏返しといううがった見方もできてしまうのは面白い。

また繰り返すが貯蓄率は投資力として見ることもできる。
現在はリーマンショックが起こる前くらいの水準まで投資に回す現金がなくなっており、購買意欲の以前に購買力がないようだ。
そのうえで高インフレにより日々の家計に打撃を受け続けているため、生活費をねん出するには預金の切り崩しだけでなく投資の売りも起こるだろう。
米国民が一斉に貯蓄の切り崩しを始めたら、その預けられていた資金で運用していた金融機関には一体何が起こるだろうか。嫌な予感しかしない。

最下段に企業収益を示した。経済カレンダーに出てこないのでマイナーなものかと思っていたが、確認したところBEA(アメリカ合衆国商務省経済分析局)というGDPなどのデータを作成している機関が発表するもので、アナリストたちがよく見る重要な指標らしい。
ここで考えたいのは、例えば株を買う場合、財務の何を見るだろうか?よく見るのは「売り上げが毎年伸び続けているか」ではないだろうか。
ここで示している企業収益(前年比)もまさにその傾向を示したものである。
統計データであるこの企業収益が下がれば、それは企業全体的に売り上げが前年比で落ち込んできていることを示している。
これが昨年6月の時点でピークアウトし、そろそろマイナスに転じかけるぐらいまで下がっていることに注意したい。
ついこの間の2Qの決算シーズンでは、ここで示している企業収益もギリギリプラスを保っている通り、好決算が都合よく解釈されて株高をサポートした。インフレにとっては逆効果となるにも関わらずである。
インフレピークアウト+好決算で株価が上がっていたところに、近い将来業績悪化+失業率増加が起これば、再度暴落が始まるだろう。
ここまでくると物価は勝手に下がってくるので、インフレの話はもうどうでもよくなっているかもしれない。
仮に予想以上に中間反騰が続いたとしても、それもどこかのタイミングで短期のインフレピークアウトバブルとなり、どこかで崩壊する。

とまあなんとも悲観的な記事を再び書いてみたが、前回自分でも述べたようにデータの見え方は言い方によって如何様にも印象を変えられる。
あくまで私は悲観的に見ているが、今回用いたのと同じデータを使って真逆の論述をすることも可能だろう。
今の上昇を見て「インフレもピークアウトしてきたみたいだしそろそろ株買ってみるか?」と迷っていた方が、バンドワゴンに乗る前にもう一考する機会になったと捉えて頂ければ幸いである。

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