ファンダメンタル分析
為替と貿易および株価との関係考察先日マネクリで米2年債利回りが4%を超えればドル円が140円になるという記事を見つけた。
面白い分析だなと思ったのと同時に、信憑性はどれくらいかと単純に疑問になったので自分でもチャートを書いてみることにした。
まずこの見解に対する感想を先に述べておくと、個人的にはちょっと強引すぎる結論だなと感じた。
直近の1年程度を拡大してなんとなく2年債利回りとドル円が重なっているのでそれを外挿するイメージで推測しているが、実際に自分で重ねてみるとなかなか重ねられなかったためである。
もちろん仕組み的にはこれらは連動するので参考にはなる。だが4%と言い切れるかは何とも言えない感触だった。
これを皮切りに、勉強を兼ねて為替変動の要因について自分なりに調べてみた。
一般に為替変動の要因としては金利のほかに物価や貿易収支などがあげられる。
しかし最近の為替の記事では金利や物価との関連記事はよく目にするが、貿易収支との関連が述べられた記事は見た記憶がなかった。
そのため貿易収支の観点でも実際の関連性はいかがなものか確認してみた。
上から順にさまざまなチャートを重ねており、中段が輸出入金額および貿易収支である。
ドル円のトレンドを基準に、同相の箇所はオレンジ、逆相は青で矢印を書いている。(他も同様。)
貿易収支が黒字のところは青塗、赤字は赤塗としている。また輸出入をそれぞれ描いただけだとクネクネしていてその差の変化率が見えにくかったので貿易収支は分けて描いてある。
これを見ると先月の日経新聞で出ていた直近の貿易赤字の拡大スピードが凄まじいことが分かる。円安で日銀が期待している通り輸出も好調なのは確かだが、それ以上に輸入額の跳ね上がりが2013年ごろのそれと比べてひどい。
2008年のリーマンショックあたりから有事の円買いという現象が起こり、2013年頃に底を打つまで円高が進んだ。これにより輸出は減少し貿易収支は赤字に。さらに2013年から日銀の異次元緩和により急激に円安が進んだことで輸入金額が増加し貿易赤字も増加。しかし2015年にFOMCが利上げして米国インフレ率がストンと落ちたことで日本の貿易赤字は縮小。残念なことにこの間の輸出増加は大したことなく、ほとんど外的要因で回復したと言える。また目下の大赤字は米国およびその他の国の高インフレ(+利上げ) -> 円安 -> 貿易赤字という方向の作用である。そのため近年の日本においては「貿易収支が為替に影響する」という教科書通りの影響は他の要因に埋もれるらしい。
またこれ以前の期間では、多くは円安時に輸出が増える(逆もまた然り)という理論通りの動きをしているが、日銀の為替介入が活発だった2000年前後あたりの期間には、青矢印で示したように逆相関になっている時もあったようだ。
ここからさらに思考をめぐらして株と為替の関係についても調べてみた。
過度のドル高および米国貿易赤字の対策を目的とした1985年のプラザ合意を経て急激に円高が進み、それによって落ち込んだ日本の輸出力を救済するため日銀が政策金利(公定歩合)を下げたことで、日本はバブルに突入した。(経験してみたかった。。。)
それ以降はバブルが崩壊してもしばらく円高が続き、1995年ごろから日銀の為替介入が活発となる。
野村證券が東証の株式分配状況調査をもとにまとめたデータによると、これを見計らっていたのかはわからないが、ちょうど1995年あたりから外国法人による日本株の保有率が増えてきたようだ。
※TradingViewで描画できなかったので「株式分布状況調査 野村証券」で検索。
外国人が日本株を買うには円で買うことになるため、円安の方が買い圧力が高まる。
1995年ごろに円高が進んでいたことで外国人為替投資家が利確による円売り、および日銀の為替介入が重なったことで、そこから急激な円安に転じた。
それを機に外国法人による日本株買いが加速し、2000年頃には外国法人による株保有率が20%程度まで上昇。それ以降は絶対値こそ違うものの、日経は米国株とかなりのカップリングを見せていた。リーマンショックあたりまでは。。。
リーマンショック以降輸出が激減し、円高とともに外国法人の日本株売りも起こり、2013年まで日本株は下落。異次元緩和による円安が始まると割安になったことで外国法人の日本株買いが復活し、2015年ごろに保有率のピーク(31.7%)を迎える。
しかしここで悲しい兆候に気づいた。先日投稿した関連記事で、ドルベースの日経が下にブレイクアウトしていたのである。
2013年頃に起こった円安は外国人投資家の買いを引き起こしたが、今起こっている円安はどちらかというと利確のトリガーとなっているように思われる。実際に2021年2月ごろから米インフレと円安がスタートし、それと息を合わせるように日経が下落を開始している。これは最近の米国株暴落が始まるより1年近くも早い。これは今の円安による日本株が外国人投資家たちにとって「安いから買い」とはなっていないことを示唆している。
目下の米インフレはチャートで見ると明らかにぶっ飛んでおり、初めに示したドル円vs金利の図をそのまま見ると、同インフレ率の時代(1982年頃)のドル円は1ドル190円ぐらいであり、金利もそれ相応に高かった。
そのため現状のFOMCの利上げペースおよび日銀の金融緩和が続く限り、まだまだ円安が続く公算が大きいと考えている。
一方で日銀が何かしらの引き締めを行うだろうという見方も強まっているようだが、仮に金融引き締めを行ってもインフレが主要因である以上、円高化による貿易赤字の縮小効果はむなしく、むしろ日経株の爆下げを引き起こして終わるだろう。その際すでにかなりの保有率に上昇した外国人投資家が日本株を一斉に売ることになるので、これもまた円安圧力となりうる。さらには日銀が金融引き締めを行ったところで、海外のインフレが収まらない限り輸入を高値で行うことになり、その分円を支払うことになるため円安圧力は収まらない。プラザ合意の時のように世界で足並みをそろえないと円安退治は難しい気がする。
米国株 全セクター比較米国株はスタンダード&プアーズ社(S&P)とモルガン・スタンレー社(MSCI)によって作られたGICS(世界産業分類基準)と呼ばれる計11種類のセクターで構成されている。
最近よく「今後も原油高でエネルギーセクターが伸びるのでは」のような言い方を目にすると思う。
しかし、文字ではよく見るが本当に伸びているのか、もしくは実はもっといいセクターがあるのではないかなど、ふとした疑問をチャートで俯瞰できるものが見つけられなかったのでまとめてみた。
各セクターごとの指数もあるが、買えるものの方が良いだろうと思いバンガードセクター別ETFで代用することにした。
※S&P 500をwikiで調べるとセクター別指数が記載されているが、一部指数はTradingViewで表示できなかった。表示できたものについてはすべてバンガードETFと綺麗に連動していた。
参考としてS&P500(見やすくするため1/10倍)を同軸ログスケールで重ねている。※対数軸で1/10すると傾きは変わらずに下方シフトする。
実際にすべてを重ねてみると、例えば「生活必需品株は景気の影響を受けにくい」というのは本当か、などを自分の目で確認できるだろう。
誰が何を言おうとチャートが全てである。
また各指数およびそれに連動するETFは当然ながら構成銘柄というものがあり、ピンキリの数百銘柄の時価総額の加重平均で算出されていることが多い。
そのため上位株に重みづけされているとは言うものの、たとえその上位株が大きく伸びていても、数百社もあると相当薄まっている。
そこで参考までに各セクター別ETFの上位3銘柄も列記しておく。
※220625現在。Bloombergのデータから抜粋。
個別株ごとに調べればここで示したETF以上のボラティリティ、リターンのものも見つかるだろう。逆もまた然りだが。
①VGT:情報技術セクター
・APPL:アップル
・MSFT:マイクロソフト
・NVDA:エヌビディア
②VHT:ヘルスケアセクター
・JNJ:ジョンソン・エンド・ジョンソン
・UNH:ユナイテッドヘルス・グループ
・PFE:ファイザー
③VCR:一般消費財セクター
・AMZN:アマゾン
・TSLA:テスラ
・HD:ホーム・デポ
④VOX:通信サービスセクター
・META:メタ・プラットフォームズ
・GOOGL:アルファベット
・VZ:ベライゾン・コミュニケーションズ
⑤VFH:金融セクター
・BRK:バークシャー・ハサウェイ
・JPM:JPモルガン・チェース・アンド・カンパニー
・BAC:バンク・オブ・アメリカ
⑥VIS:資本財セクター
・RTX:レイセオン・テクノロジーズ
・UNP:ユニオン・パシフィック
・UPS:ユナイテッド・パーセル・サービス
⑦VDC:生活必需品セクター
・PG:プロクター・アンド・ギャンブル
・KO:コカ・コーラ
・PEP:ペプシコ
⑧VPU:公益事業セクター
・NEE:ネクステラ・エナジー
・DUK:デューク・エナジー
・SO:サザン
⑨VNQ:不動産セクター
・AMT:アメリカン・タワー
・PLD:プロロジス
・CCI:クラウン・キャッスル・インターナショナル
⑩VAW:素材セクター
・LIN:Linde PLC
・SHW:シャーウィン・ウィリアムズ
・FCX:フリーポート・マクモラン
⑪VDE:エネルギーセクター
・XOM:エクソンモービル
・CVX:シェブロン
・COP:コノコフィリップス
佳境を迎える日銀対ヘッジファンドの日本国債10年物利回りバトル!円ドルレートにも影響!6月24日、日銀とヘッジファンドの攻防が激しく、始値0.229%、高値0.413%、安値0.218%、終値0.223%と大きな上髭で終了。
日銀は大規模金融緩和を継続、指値オペで日本国債10年物利回り0.25%に抑え込んでいます。一方、英国のブルーベイ・アッセト・マネジメントなどヘッジファンドは、日銀による0.25%イールドカーブコントロールは維持不可能とし、国債先物で大掛かりな売りを仕掛けています。
国債価格が急落した場合、国債費の急増・住宅ローン返済不能や中小企業借入負担の懸念などから日本国債の格付け引き下げも懸念されます。
日銀がヘッジファンドに負けた場合、短期的には金利上昇から円安。長期的には、わが国国債格付けが引き下げられた場合、構造的な円安も懸念される。